敷島工藝社産業部

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平成15年1月度・月報

5.「ケータイ」と人間の意思伝達


<ケータイ・ブーム>

  大変な情報通信の時代になったものです。世の中は、「ケータイ」を持たない者は、人にあらず、の
感も否めない様な世間の風景です。家を一歩外に出ますと、まず、前を見て真っ直ぐに歩いている人は
おりません。殆どの人、特に若い世代の人たちは、中学生から若いサラリーマンまで、間違いなく
手に持った「ケータイ」と「無言の会話」をしております。

  新聞の記事に依りますと、「財布を忘れても取りに帰らないが、ケータイを忘れたら取りに帰る」
のだそうです。まさに、肌身離さずの「日常生活必要携行品」になっているのです。

 昔は、「電話」は「聞いて答えるもの」であって、決して「見て手で返答するもの」ではなかったの
です。ところがどうでしょうか。今は、せっせと見て手で返事しています。それも「親指一本」で。
 歩いている人だけかなと思いきや、行き交う自動車の運転手も全部片手運転で、片手にはしっかりと
「ケータイ」を「携帯」しています。
 これまで電話による情報伝達の場所は、電話のあるところ、公衆電話ボックスのあるところ、と
限られていましたが、もはや無線の「携帯式電話」になりますと、使用するところは、場所を問い
ません。
 公道で、電車の中で、バスの中で、映画館で、劇場で、コンサートホールで、公会堂で、人が音楽を
演奏していようが、講演していようが、「成人式典」を挙行していようが、関係ないのです。
 
 自分だけの情報交換がとれれば、周囲の人間が迷惑しようが知ったことではない、とばかり
「ケータイ」さまさまが、のさばっています。あまりののさばりかたに遂に、あちこちで苦情が
出始めています。電車の中では、「ご遠慮下さい」、病院では、「心臓のペースメーカー」への
影響まで持ち出して、持ち主の良心と、自粛の精神に訴えています。

 ここで「ケータイ」とカタカナ書きしているのは、理由があります。
 日本で急速に発達した「ケータイ」のいろいろな多岐に渡り付与されている機能の携帯式電話システム
に世界が注目しているのです。
 もともと「ケータイ」は、日本が発祥の地ではないのです。台湾などは、日本の「ケータイ」ブームの
少なくとも半年か、一年前に「ケータイ」ブームに乗っておりました。少し遅れて、日本で、携帯電話が
普及しだしたのです。

 日本人が、この便利な情報システムを手に入れるや、お得意の機能付与および機能改善がどんどん
進み、大変便利な且つ魅力的な情報伝達システムにしてしまいました。
 日本式「ケータイ」が欧米各国に普及しますと、多分「ケータイ」が世界共通語になる可能性がある
から、敢えてカタカナ書きとしました。
 昔、戦前では「ゲイシャ」「フジヤマ」「キモノ」、最近では、「カイシャ」「カンバン」なども
導入されているようです。「トヨタ」「ソニー」などの商品銘柄の日本語もさることながら、技術面での
日本文化が外国へ輸出され、世界各国で定着することは、望ましいことではないでしょうか。 

  ごそごそとあるいはいそいそと、掌に乗っかった小さい「ケータイ」と遊んでいる日本人の集団を
見ますと、「せっせと毛繕い」している「お猿さん達」の姿に見えてしょうがないんですが。(失礼!)
 ひょっとしますと、もっと「ケータイ」化が進みますと、電車の中で隣同士が「ケータイ」で
話しをするようになるのでは。現に、笑い話のようですが、家庭の中でのパソコン・ネットワークが
進みますと、二階の人と一階の人がパソコンで会話をする時代ですし、大きな会社や病院になどに
なりますと、むしろそうした方が便利で、仕事が捗ることが考えられます。

<ケータイの現状>

 こんなに日本人の日常生活の回りに、なければならない「文明の利器」となった「ケータイ」の
現状は、次のようなものです。(出典:自由国民社「現代用語の基礎知識」(2003年1月))

 (その1)携帯電話と加入電話契約数
      
      従来の加入電話システムの最盛期は1997年で、全国で6100万台強でした。
      それが5年後、減少傾向にあり、5100万台弱になりました。
      一方携帯電話の方は、2000年3月時点で、加入し記電話の契約台数を抜きました。
      それほどに「ケータイ」が現在の日本人の生活環境のニーズに対応していたのでしょう。
      2002年3月現在、「ケータイ」は7000万台にのし上がりました。
      人口普及率でみますと、55.5%になりますから、二人に一人は、「ケータイ」を
      携帯していることになるのです。

 (その2)携帯式電話の各種機能

      現在「ケータイ」の電気通信事業者には、主だったところ三社があり、それぞれ契約獲得に
      大変な競争を展開しています。ただ単に売り込みだけでは、特徴がありませんから、
      各社いわゆる「ケータイ」の「コンテンツ」開発に躍起になっているのです。

      A社 契約台数 4146万台
         カメラ付き機能でかつ高速通信を売り物にし、テレビ電話通信を次の目玉商品に
         している。      
      B社 契約台数 1270万台
         高速大容量(3G)の第3世代「ケータイ」世界を目指していて、データ通信を
         狙っている。
      C社 契約台数 1267万台
         内蔵カメラ撮影写真機能付与し、世界各地の何処でもしよう出来ることを
         目指している。

<次世代ケータイ>

 前節では、「ケータイ」の悪い面ばかりを持ち出しましたが、良い面も色々あります。

 (その1)「公衆電話ボックスを持ち歩いている」
      昔は、連絡を取りたいと思っても、電話のあるところに駆けつけないとどうしようも
      ありませんでした。辺鄙なところほど「ケータイ」は威力を発揮します。
      何処にいても、何時でも、連絡が取れるというわけです。
      親が家族を思うからこそ、子供に持たせているのでしょうが、その目的を
      持たされた方は、自分の都合の良いように使っているわけです。
      (注)「ケータイ」の台数が増えているのは、大人だけではなく、
          青少年まで持ち出したことが7000万台契約の理由でしょう。

 (その2)「位置確認の端末」
      存在確認の端末になります。特にある種の機能を付与した機種では、GPSを搭載する
      ことによって位置確認端末になるということです。
      高齢化社会になり「徘徊老人」が心配な世の中です。これさえあれば、すぐに
      処置できます。
      (注)さらに理想を言うならば、家から信号を送れば、「ケータイ」が
         「徘徊老人」を誘導して、家まで連れ戻してくれれば言うことありません。 

 (その3)音声で説明できないイメージ情報の伝達が出来る     
      文字が読めない、理解できない人々の間の情報交換には、もってこいの意思伝達機能です。
      異民族間の意思伝達は、「ケータイ」で、などということになりかねないです。
      (注)孫悟空の「金斗雲」とは、21世紀の「ケータイ」のことではなかかったか。

 (その4)インターネット情報に接続できることで、図書館や美術館を持ち歩いていることにもなる。
      知りたいことを知りたいときに、手に出来る情報の「玉手箱」です。
      (注)アリババの「魔法のランプ」とは、21世紀の「ケータイ」では、なかったか。


 上述の特徴を活かしつつ、さらに人間生活に便利な情報伝達機構になることを望むところです。
 
 最近の新聞記事(読売新聞・平成15年1月28日夕刊)によりますと、「ケータイが財布代わり」
という見出しで、ケータイに付与されつつある新しい機能を紹介しています。

 「クレジットカード機能付いて」「ケイクレジット」と呼ぶのだそうです。「試験サービス」は
前述のB社の系統で、クレジット会社4社と協力体制を取って「平成15年3月から東京と名古屋の
デパートと一部の飲食店で各クレジット会社のモニター2000人ほどで試用する」という現実の
売買形式です。
 原理は携帯電話に填め込まれたICカードが赤外線アダプターを介して店頭のレジスター端末と
通信し、「クレジットカード」のICメモリーを読むのと同じ動作をするというのです。
 したがって、財布から従来のICカードをとりだすか、携帯電話を取り出すかの違いです。
 どちらが早いか、今のところレジスターとの交信に2,3秒かかるそうですから、カードをサッと
通す方がやや早いようです。

 しかし、携帯電話がクレジットカードの役目もするとなりますと、持ち歩くものが一つ減る代わりに
「ケータイ」は、「命の次ぎに大切なもの」になりそうです。 
 上述の「ケータイ」に付与されつつある各種機能は、伝達したい情報を、より多く、より効率的に、
より分かりやすく、というのが狙いであるわけですが、特に「データの転送や高速化」はこの分野の
第三世代システムと言われています。

 その為には、電子メールにインターネットを接続してしまうという情報の受け渡しをするのです。
 さらには、ゲームを楽しんだり、CCDカメラの映像を転送したり、さらには、動画の電送も
行われつつあります。こうなりますと、掌の「ケータイ」がテレビ映像を送る端末にもなるわけで、
大変な情報が飛び交うことになります。もはや、テレビの前に座ってじっと送られてくる一方的な
動画を見ている世界から、自ら動画情報を発信する世界に大変貌することになります。

 画像だけでなく、音声の世界も組み込んでくるとなりますと、まさに全ての情報が「ケータイ」を
媒介としてやり取りされることになるわけです。
 即ち「ケータイ」というテレビを持ち歩くことになるわけです。
 こういう世界が実現しますと、もはや人とおしゃべりをして楽しむ時間もなくなり、人間は、人間の
相手をするのでなく「ケータイ」と生活を共にしているということになるやも知れません。

<参考メモ・人間の意思伝達方法>

 人間が自己の存在を表現するのに如何なる方法があるかを、まとめた考察図があります。
 これは、「人間の基本的特性は何か」を検討するグループ討議の手引きにまとめたものです。

 この考察図では、
   人間の基本的な要望や欲求は何か。
   それらを如何なる方法で、目的達成するか。
   時間的且つ空間的條件を除いた人間特性を探る。
事を念頭に置いたものです。

人間の自己表現方法の六角形分類法

<参考メモ・電話の歴史豆事典>

 電話の原理:音声ー(空気の振動)ー 送話器の振動板の振動ー
         ー(振動板が炭素粒子を押す )ー接触電気抵抗変化ー
         ー(電流の変化)ー受話器の電磁石コイルー
         ー(変化する電流に比例した吸引力)ー振動板の振動ー
         ー(空気の振動)                ー音の伝達
 発明の歴史:1837年 C。G。ページ 電信スイッチ開閉原理を音声ピッチ電送への活用検討
       1854年 C。ブールスール 同上の検討
       1861年 J。P。ライス 振動板と接触針装置の開発
       1872年 A.G.ベルとE.グレー 多重電信の研究(周波数分割多重方式の実験)
       1874年 E.グレー スピーカーの開発       
       1875年 A.G.ベル 永久磁石と鉄板の振動の実験
       1876年 E.グレー 酸水槽の送信機開発 ベルと共同特許出願
             A.G.ベル 通話に成功
 実用機歴史:1877年 商用通話開始
       1878年 T.エディソン 炭素粒送信機開発
             米国コネチカット州で 21加入者で電話交換開始  
       1887年 各国の加入数 アメリカ 150000
                    カナダ   12000
                    イギリス  26000
                    ドイツ   22000
                    フランス   9000
                    イタリア   9000
                    ロシア    7000
 日本の歴史:1877年 電話機輸入 工部省ー宮内省間で実験
       1890年 各地の加入数 東京 155
                    横浜  42
       1893年        大阪  開始
                    神戸  開始
       1989年 電話機輸入後112年後 50000000に普及
       1997年       120年後 61000000のピークに達する。

日本最初の実用機 ガワーベル電話機(1889年)NTT提供

*** 平成15年1月31日 ***産業部技術顧問・中西久幸


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