敷島工藝社産業部

敷島工藝社産業部の掲示板


平成19年12月度・月報

14.箸のはなし
ー最も身近な生活必需品ー


目     次


<箸の歴史><箸博物館><箸のいろいろ>

<箸の歴史>

 日本人は元より、周辺の東アジア地域の国々(中国・台湾・シンガポール・ベトナム・モンゴル・韓国・
北朝鮮など)では、一日三度の食事時の日常生活において、必需食器になっているのが「箸」で、世界の
約30%に当たる人々が「箸文化」を共有しているとのこと。
 いつの頃からこの地域では、箸を食事の用具として使うようになったのでしょうか。物の本に拠りますと、
「五千年前、中国で煮えたぎった鍋から食べ物を取り出すのに二本の木の枝を使ったのが箸の始まり」と
されているとのこと。
  お箸の日本への伝来時期は、約2300年前、米作りと共に中国南部より伝わってきたとされています。

 古代中国では、孔子が「君子厨房に近寄らず」と言ったため、厨房や食材を取り込む所でしか使わない
刃物を食事時の用具にするが敬遠され、西欧の「ナイフとフォーク」に代わり、箸が食卓上で使用する
ようになったとされています。したがって、中国料理はあらかじめ厨房で口に入る大きさに料理され、
箸で取りやすい大きさに切りそろえられ、食卓に出されるようになっているというのです。西洋料理の
食卓では堂々とフォークやスプーンとともにナイフが使用されているのとは非常に対照的です。
 そうしてみますと、箸で物を食べることが如何に優美であるかという見方も出来るというもので、こういう
言い方をすると「Knife & Folk」民族が野蛮に見えてきそうです。
 最近では、東アジアの「箸文化」が日本料理・中華料理の世界的な普及につれて、欧米でも食事には
器用に箸を使える人が増えているようです。
目次に戻る

<箸博物館>

 京都の山科には「箸」の博物館があります。

「京都お箸の文化資料館」住所:山科区御陵天徳町29
              (JR山科駅の西側、旧三条通とJR線路の間)
            館長:井津守進氏
 井津館長のお父さん・寅吉さんが吉野から京都に出てきて、箸職人となり、山科の地で箸を製造して
きたことから、ビル住宅の一角を博物館に模様替えしたて箸のいろいろを展示しているというものです。
 外観は添付写真1を参照願います。一階、二階ともおおよそ八畳ぐらいの広間で、いろいろの
箸が陳列されていて、添付写真2、写真3、写真4のような展示になっています。

(左)「京都お箸の文化博物館」外観(右)館内展示状況(その1)

(左)館内展示状況(その2)(右)館内展示状況(その3)
 ちなみに、京都新聞の当館紹介ホームページと、訪問したことのある人の散策ホームページをリンクしておきます。
                 
(1)箸のいろいろ(その1)巨大な箸の持ち主は?
 館内には、ジャンボ箸(2。1m長さ)も展示されていますが、この箸はどなたのお箸なのでしょうか?
 一つの名案は「ガリバーが日本にやってきたときのために備えたもの」というものです。一般に箸の長さは
身長の10分の1とされますから、ガリバーの身長は、1.8mX10=18mということになります。

(2)箸のいろいろ(その2)割り箸はだれがいつ、長さを決めたのか?
 インターネット情報の百科事典から、割り箸屋さんの情報を入手してみますと、
  (http://www.waribashi.co.jp/erabi.htm)
 六寸(16.5cm)七寸(18cm)八寸(20cm)九寸(24cm)五分長(26cm)と
あるのだそうです。世の中の寸法は、全て元はといえば、人間の身体を基準に決められたものが多いのです。
 割り箸といえば、「地球環境保護問題の最たる仇」にされています。

(3)箸のいろいろ(その3)箸の長さは何が基準になっているのか?
 「安岡寺のフクロウ」さんからの情報で、最適な箸の長さの由来です。
 最適な箸の長さは1.5咫(アタ、タ)(1咫=16cm)とのこと。親指と中指を直角に開いたときの
長さが咫ですから、最適箸の長さは24cmとなります。現在日本人社会で一般的に使用されている箸の
長さは、どのくらいでしょうか。
 その昔、長さ単位の基準は人間の身体であったのが、近代になると地球が基準になり、今は光の速度が
基準となっています。人間社会に於ける単位の拠り所もいろいろ変遷があります。
 ついでの漢字知識:咫(アタ、タ)の漢字で思い出されるのが、「八咫鴉」、「八咫の鏡」などです。
咫の部首は何んと、驚く無かれ「口」の六画に入っています。
目次に戻る

<箸のいろいろ>

 「京都お箸の文化資料館」では、お箸のいろいろを解説しています。

 題して「箸の封じ手ー十手」。
(1)移り箸:おかずばかり続けて食べて、ご飯を食べない。
(2)こじ箸:盛った料理をあちこちお箸で動かすこと。
(3)迷い箸:食べる料理に迷い、お箸を料理の上で動かすこと。
(4)持ち箸:お箸を持った手で食器をもつこと。
(5)空箸:一度お箸で料理を付けておきながら食べない。
(6)刺し箸:料理にお箸を突き刺すこと。
(7)箸渡し:つまみ上げて料理を別のお箸で採ること。
(8)寄せ箸:食器をお箸で手前に引くこと。
(9)くわえ箸:お箸を口に、食器を手に。
(10)立て箸:盛ったごはんにお箸を二本とも突き立てること。

 さらにこの十手にもう十手を加えましょう。
 封じ箸ー十手(続き)
(1)話箸:食事中、箸を持つ手を振り回して話す。
(2)たたき箸:食器を箸で叩く。
(3)さし箸:箸でものを刺す。指し示す。
(4)拍子木箸:食事の前に箸をたたき合わす。
(5)なめ箸:食事をせずに箸をなめまわす。
(6)遊び箸:指先で箸をくるくる回して遊ぶ。
(7)折箸:食事が終わった途端に割り箸を折る。
(8)片箸:一本箸で使う。
(9)縦仕舞い箸:食後箸を縦に置いたり、ぞんざいに箸を散らかす。
(10)道具箸:串代わりその他、箸以外の目的で使う。

  
目次に戻る

*** 平成19年12月23日 ***産業部技術顧問・中西久幸


ご感想は、E−mail先へ、ご投函ください。
敷島工藝社のフロント・ページに戻る。