敷島工藝社産業部

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平成19年2月度・月報

13.人間の時間と空間
ー天文学の発達と宇宙空間ー


目     次


<最近の日本の宇宙観測>
<137億年と300億光年>
<宇宙世界の関心事>
<人間の頭脳世界の拡大>

<最近の日本の宇宙観測>

 最新の宇宙関係の新聞情報(平成19年2月7日付け朝日新聞記事)によりますと、欧州宇宙機構
(ESA)が宇宙の全方向から降り注いでいる電波(宇宙背景放射)の観測衛星「プランク」を
2008年7月ロケット「アリアン5」で南米ギアナから打ち上げ、「宇宙の正確な年齢や、宇宙
膨張に影響しているとされる<ダークエネルギー>の解明」を計画しているとのこと。
 時宜を得て日本に於ける宇宙観測活動の現況を地元の生涯学習センター市民大学で聴講しました。

 日本に於ける宇宙観測活動は、可視光による地上からの観測としては米国ハワイ・マウナケア山頂に
設置された国立天文台の「すばる望遠鏡」を使うと共に、一方で2005年から2006年に打ち上げ
られた次のような衛星群による宇宙からの電磁波情報を取り出す「ハッブル宇宙望遠鏡」による活動も
あるのです。
 (1)X線天文衛星「すざく」ASTRO−E(2005年7月打ち上げ)
           X線によるブラックホール、超新星爆発、星の表面爆発などの宇宙観測
 (2)赤外線天文衛星「あかり」ASTRO−F(2006年2月22日高度700kmに打ち上げ)
           赤外線による全天サーベイ観測で、生成した星や銀河の生成、惑星の観測    
 (3)太陽観測衛星「ひので」SOLAR−B(2006年9月23日高度680kmに打ち上げ)
           可視光磁場望遠鏡、X線望遠鏡、極端紫外線撮像分光装置などを装備して
           太陽フレアや高温ガスを観測し、その宇宙空間への影響を調査
 
 いずれの衛星も大気圏外から宇宙観測するためのもので、大気で弱められたり消滅したりする宇宙
からの電磁波情報をより多く、より正確に捉えようとするためです。人間にとって大気圏は生存して
いくためになくてはならないものですが、宇宙観測には妨げになるのです。
 ハッブル望遠鏡は1990年頃から活用されはじめた宇宙観測技術ですが、この十数年大いに威力を
発揮しているようです。
 上記の観測衛星のうち「ひので」は日・米・英国の国際協力により、昨年12月より本格的観測が
開始されたので、今年3月頃よりその結果が公表されるようですから、その成果に大いに期待したい
ところです。
 因みに日本の活動組織は、宇宙航空開発研究機構(JAXA)という一度には覚えられそうにない
名称の集団です。嘗ての宇宙科学研究所や宇宙開発事業団の改組組織です。
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<137億年と300億光年>

 これまでの宇宙観察結果から、宇宙は大凡137億年(一説に150億年)前に起きた大爆発
(ビッグバン)で誕生したとされ、46億年前地球が誕生し、太陽の周りには数個の惑星を従えた
 太陽系が誕生しています。
 広大な宇宙には銀河系のような星の集団が稀薄なガスの空間に島のように浮かんでいるというのが
現在判明している宇宙空間像です。それらの銀河系は平均して約100万光年の距離があるという。
 これらの宇宙空間の広がりの比較をしておきますと次のようになります。

  地球の大きさ    0.0424光秒(=1.345x10のマイナス9乗 光年)
            (一秒間に走る光の距離を「光秒」として) 
  太陽系の大きさ   30000光秒(=0.001光年、1年=31536000秒として)
            (海王星の周遊軌道直径を大凡100憶kmとして)
  銀河の大きさ    10万光年(=100000光年)
  宇宙空間の大きさ 300億光年(=30000000000光年)

 簡単には想像しかねる「想像外空間」ですが、現在人類が考え得る宇宙半径を150億光年として
います。したがって「想像を絶する宇宙空間像にも限界がある」ことになり、それを人類は自分の
想像の限界として「宇宙の地平線」と称しているのです。
 悪戯好きな人は更に問うことでしょう。「その宇宙の地平線の彼方には、なにがあるのか?」と。
その質問への宇宙科学者の解答は「????」と黙さざるを得ません。

 これまで人類の宇宙観測には、距離の単位として光が用いられています。すなわち一光年(ライト
イヤー)は、ひかりが一年間に走る距離のことです。光の速度は秒速大凡30万kmですから、
一年間では、9兆4600憶キロメートル=9.46x(10の12乗)kmです。
 この単位長さで太陽に最も近い恒星(ケンタウルス座)まででも4.3光年で、太陽系が属して
いる銀河系の有効直径でも10万光年、銀河系に比較的近くの星雲(アンドロメダ星雲)まででも
約200万光年といいますから、いかに宇宙の広がりが広大かがわかります。またこういう廣い
世界の距離をわからしめる手段を考え出した人類の知能のすばらしさも改めて、感心するところです。
 因みに、天文学で用いられる長さのいろいろな単位を抜き書きしておきます。

  名称     略号    km             対象となる天体空間
  メガメートル Mm      (10の三乗) 人工衛星
  天文単位   AU 1.50x(10の八乗) 太陽と地球の距離を単位とする太陽系の天体 
  パーセク   pc 3.09x(10の十三乗)恒星、星団、星雲(=3.26光年)
  
 光年の元になっている光の速度は、既にルネッサンス期のガリレオ・ガリレイによって計測が開始
され、1676年にレーマーが木星の衛星食より、1772年にブラッドレーが光行差により、
1849年に高速度回転歯車シャッターにより、さらにフーコーが実権室内で、1887年には
マイケルソン・モーレーが干渉計を用いて、測定してきた距離の単位であったのです。
 考えてみれば、「光に速さがある」と気づいて確認すること、更にそれを使って人間が生存している
空間を具体的数字で示すことを敢えて行こなった人間の頭脳もたいしたものだと再認識する次第です。
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<宇宙世界での最大の関心事>

 宇宙観測技術が発達していくに連れて、宇宙の謎の解明が進み、人間が検知できる宇宙世界は
空間的には拡がり、時間的にはより長くなっていくのではないでしょうか。その状況の中にあって、
昔から宇宙世界に関して最も関心があった事にひとつに「地球外天体に人間はいるのか?人間と
言わないまでも動物は、あるいは、生物は存在し、生存しているのか?」ということではなかった
でしょうか。
 人間が地球上にあって、太陽や月を、あるいは星空を眺めて、宇宙への関心を持ち出して、はや
数千年が経過しようとしています。また、地球外の天体として、最近接天体である月まで、人間は
足を伸ばすことが出来ましたが、未だに地球外生物体を確認できていません。何千億個(一説に
銀河系での恒星の数は2000〜3000憶個)とあるとされる宇宙空間にあって、たった一つ
地球だけに人間始め多くの生物が存在し得ているのでしょうか。
 そんなはずはない、といいたいところですが、事実とするならば、誠にめづらしい事であると同時に
なんとも心細く、かつ物寂しい感じを受けます。

 この疑問に対する現状の専門家の答えは、次のようになっています。
 「銀河系の中で太陽系のように惑星を従えた恒星は、おおよそ120個ほどになる。そのいずれもが
  木星のような巨大惑星ばかりで、地球型惑星は未だに見つかっていない。
  これからこれらの惑星(「系外惑星」)の大気の成分まで観測しようとしかけている。ひょっと
  すれば地球型惑星が発見されないとも限らない。」 

 しかしながら、答えはそう簡単ではなさそうです。と言いますのは、生命体に必要な水の存在は
ある限られた天体環境温度条件が必須であり、また天体の運行が楕円公転軌道であっては、天体の
温度変化が大きすぎて、生命体の存在環境とは成らないようです。
 とはいえ、「銀河系の中でも地球と同じ様な天体は、1000万個以上はあるかもしれない」と
推測されています。
 すこし希望が出てきました。あと何世紀以内に地球外惑星に生命体を発見できるのでしょうか。
 後世の人類に楽しみですね。     
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<人間の頭脳世界の拡大>

 これまで宇宙観測の現況を知るにつけ、人間の住む空間や環境のことがより具体的になってきた
ことがわかります。ほんの数百年前までの人間はせいぜい地球を取り巻く、月や太陽あるいは可視光に
よる星の世界がせいぜい理解できる世界でしたが、宇宙観測技術の発達ともに、認識できる人間世界の
時間と宇宙空間は果てしもなく拡がってゆきます。
      
 果たして人類はどこまで神の領域に近づけるのか、また神の領域に踏み込むことが出来るのか。
 この問題は、単に「宇宙開発」だけに留まらず、「小宇宙」と呼ばれている「人体の世界」、
すなわち遺伝子操作の問題、さらには人間の生死の問題にまで関わった重大なテーマであることは
確かです。
 神の創造物である人間が、神を越えることは出来ないまでも、神に限りなく近づくことが許されて
いるのかという命題自身さえ、人間にはわかっていないままの「人間気ままな活動」であるかの
様に思えてなりません。現在の人間の活動範囲と勢いでは、とても自省と反省を持つ余裕はない
ように見えます。一旦此処で、「人類文明のわき上がり」「人間の勝手やり放題」に冷却期間を
おいて、再度神とじっくりと対面して対話してみる時なのかもしれません。
 いつになれば神の啓示がいただけるのか、いつとの約束がないままに、人間は次へ次へと突き進み
挙げ句の果てには、自滅するのかも知れません。それが、神の答えだったとあとで気がついても
その時は、「時既に遅し」です。
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*** 平成19年2月11日 ***産業部技術顧問・中西久幸


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