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平成18年12月度・月報

12.ウィーン発ザルツブルグ行特急「モーツアルト号」
ー地球環境破壊防止への取り組みー


目     次


<KYOTO-EXPRESS><環境省白書><人間は生き残れるのか>

<KYOTO-EXPRESS>

 平成18年、2006年は、かの天才ウォルフガング・アマデウス・モーツアルトの生誕250年
記念の年に当たり、世界各国でモーツアルトを讃える色々な企画やコンサートが行われてきました。
その為、彼の生誕地ザルツブルグを訪問する音楽ファンも多くいたことでしょう。
 さて今年もいよいよ年末となり、モーツアルト音楽年の仕上げが各地で開催されているところです。
 ところで、モーツアルトのふるさとザルツブルグへ向かうウィーンの人々の足になる列車の時刻
案内パンフレットが次の列車内旅行案内シートです。

(注)(資料は編集子の知人でドイツ国情通のYAMAMORI氏より拝聴しました。)

 「MOZARTーEXPRESS」でなく、「KYOTO−EXPRESS]であることに
ご注意願います。どうして「特急京都号」なのでしょうか。
ーーーーウィーン=ザルツブルグ間ーーーー
<<<<列車インフォーメーション冊子>>>>
IC740 KYOTO−EXPRESS(特急京都号)
**** 特急京都号で環境保護目標を達成しよう ****
積極的に環境を保護することは、現代の最大の挑戦すべき課題です。
洪水や干ばつは、地球規模の気候変化の予兆なのです。
1997年京都での環境保護会議で、オーストリアは気候変動の原因になっている温室効果ガスー特に炭酸ガスの排出量を13%削減する義務を負いました。
各人の貢献によって高い目標も達成することが出来るのです。
オーストリアでは、炭酸ガス排出の大半部分は道路交通に依っています。
自動車交通量のはなはだしい増大により、京都議定書目標値を達成することは、最大の頭痛の種です。
**** 鉄道は炭酸ガス(排出)を節減するといわれる *****
政府環境局の最近の調査に依れば、オーストリアにおける鉄道の炭酸ガス排出量は、自動車交通の 10分の1にすぎないと報告されています。
「特急京都号」に乗ればウィーンーザルツブルグ間だけであなたは炭酸ガスを30kg節減する ことになります。
オーストリア鉄道(OEBB)は、2005年度環境保護活動を強化し、さらに(道路利用から) 鉄道利用への切り替えのため、さらなる魅力的なサービスを用意しています。お薦めするところです。
オーストリア鉄道(OEBB)は、政府生活省の関係活動グループ(klima:aktiv)として きれいな空気と貴重な自然保全のために本質的な貢献をして参ります。
<<< オーストリアの緑の路線より>>>
 日本的列車案内であれば、この「KYOTO-EXPRESS」なるウィーン発ザルツブルグ行特急列車の
愛称を観光施策的観点から「モーツアルト号」として、世界各国から人々を勧誘したいところです。
 ところがモーツアルトのふるさとの人々は、もっと崇高な精神をもっていて、モーツアルトも
超越した「人類生き残り作戦」に真剣に取り組んでいるのです。

 果たしてこのような意気込みは日本の国家的行政機関、さらには日本人一般社会の中に認められる
でしょうか。かの地球環境破壊防止への取り組みとして重要視すべき「京都議定書COP3]なる
条約への思い入れはどれほどあるのでしょうか。せいぜい「京都議定書」とは、なんぞや?と
問い返されるのが関の山です。地元の京都人でさえ、「地球環境破壊防止への取り組み」は、どの
ように展開しているのか、情報の発信さえ、疑わしいところです。まして、環境省の音頭取りは、
「笛吹けど踊らず」とばかり、一応それらしい見せかけの施策はあれこれと手を替え品を変えては
いるものの、どこか一辺倒なお題目唱えに終わっていないでしょうか。

 「KYOTO−EXPRESS]ほど、具体的で、かつPR効果抜群の啓蒙的施策として勝れた
実行事例はないのではと思います。
 京都人はもとより、日本も「京都議定書」を重要視して、より具体的な「地球環境破壊防止施策」
に取り組むべきではないでしょうか。
 「特急京都号」の様な具体的且つ解りやすい又賛同が得られやすい行政的旗振りと各個人的行動が
求められるところです。
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<環境省白書>

 前述の国家的取り組みへの事務局というべき環境省の現況報告書「環境省白書」より当該
「地球環境破壊防止への取り組み」情報を紹介しますと、次のような「HAND-ON INFOMATION」を
入手しました。

(注)(資料は編集子の知人で地球温暖化関係にご造詣の深いMARUYAMA氏より拝受しました。)

1.地球温暖化の現状
   地球の平均地上気温は20世紀に0.6度上昇し、平均海面水位は10〜20cm上昇して
  います。100年後の予想として、気温は1.4〜5.8度、水位は9〜88cm上昇します。
  これらは地球の歴史上過去一万年間でも起こっていない異常な環境の変化とされます。
   一方、世界的な環境保護への取り組みは、先日南アフリカケニヤ・ナイロビで開催された
  地球温暖化防止条約締約国会議で、「京都議定書」に決めていない2013年以降の温暖化
  対策枠組み造り作業を本格化することで合意しましたが、果たして会議倒れにならない
  でしょうか。各国の真剣な取り組みが望まれます。

2.具体的な温暖化防止取り組み事項
  (1)エネルギー源としての電池関係開発
     (イ)リチューム電池:8輪電気自動車(ELIICA project)
                次世代型電気自動車(三菱自動車 M1EV)
                電池路面電車
     (ロ)燃料電池
  (2)発電システム開発
     太陽光発電、地熱発電、風力発電
  (3)新燃料開発
     バイオ燃料(安部首相所信表明演説で言及)、バイオマス
  (4)炭酸ガス処理方法
     地中への封じ込め作戦、炭酸ガス排出権の規制
  (5)各産業界(自動車、鉄鋼、家電、輸送、ガスなど)での取り組み状況
     (イ)鉄鋼業界:(例)粗鋼生産18%に係わらず、
                炭酸ガス排出量6.4%削減(対90年比)
                シャフト炉建設で炭酸ガス排出量半減(対高炉比)
     (ロ)ガス業界:(例)2008年度から天然ガスからの「ガス・ツー・リキッド」
                商業ブランド受注をはじめる。

(注)環境省白書での環境問題の現状と平成17年度実施環境保全施策の説明目次
   第一章 地球温暖化防止・オゾン層保護
   第二章 大気環境の保全
   第三章 水環境、土壌環境、地盤環境の保全
   第四章 廃棄物・リサイクル対策などの物質循環に関わる施策
   第五章 化学物質対策
   第六章 自然環境の保全と自然とのふれあい推進
   第七章 各種施策の基盤、各主体の参加および国際協力に関わる施策

   環境省のホームページ「平成18年版図で見る環境白書 第二部」の総括文言は、
   「政府は、平成17年4月に京都議定書目標達成計画を閣議決定し、低公害車、省エネ型
    器機、太陽光発電の導入などの施策を進めています。
    二酸化炭素は、人間活動のあらゆる局面から生じる物であり、京都議定書目標6%削減
    目標を達成するためには、国、地方公共団体、事業者、国民のすべての主体がそれぞれの
    役割に応じて省エネルギーなどに取り組まねばなりません。」
   と表明しています。

(左)地上気温の上昇(中)国別炭酸ガス排出量(右)南極上空のオゾン増加状況
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<人間は生き残れるのか>

1.人間の利用可能なエネルギー資源とその利用の歴史
  太古の昔より人類が利用してきた人間生活に必要なエネルギーは、作用原理別に区分しますと、
  力学・熱・化学・電気・磁気・核・光・放射光などになりますが、エネルギー源の利用方法別に
  分類しますと、
  (1)再生可能なエネルギー 水力、太陽熱・太陽光、風力(台風)、バイオマス(薪も含む)
                地熱、波力、潮汐力、雷、地震など
  (2)再生不可能なエネルギー 化石燃料類(石油、石炭、天然ガス)、ウラン、
                 重質油(オイルサンド、オイルシェール)、メタンハイドレート
  などです。これらの各種エネルギーを使い出してから、未だ何千年にもならないでしょう。
  殊に再生不可能なエネルギーの利用に当たっては、ほんの数千年を越えないごく近年の時代の
  状況です。
  人間社会の工業化が進み、人口が増加し、食料不足となり、天然資源が枯渇し、加えて、
  環境が悪化する事態へと進んでいます。特に、ごく近年化石燃料を使用し始め、その便利さから
  大量に、使い始めてから、地球の炭酸ガス濃度が上昇し、その為に地球温暖化問題が引き起こされて
  いるのです。
  1972年に国際連合機構で人間環境会議を開催し、当該問題の地球規模で取り組みはじめましたが、
  なかなか思うように事態は好転せず、状況は悪化の一途を辿っています。
  1987年「国連環境開発世界委員会」
  1992年「国連環境開発会議」(地球サミット)(ブラジル・リオデジャネイロ)
  1997年「第三回締約国会議」(京都議定書)(京都)
  などを経て、温室効果ガス数値削減目標(先進国5。2%)を約束してから、ほぼ10年が経過
  しました。
  「温室効果ガス」は、大半(9割以上)は炭酸ガスで、他にメタン、酸化窒素などです。 

2.人類のエネルギー使用形態の変遷とその原因
  人類のエネルギー使用の歴史は、上述のように18世紀頃から炭酸ガスを排出する事態を招いて
  います。18世紀までは、再生可能なエネルギーである風力、水力などを主として利用し、炭酸
  ガスの排出に関わっていませんでした。ところが、産業革命によって、それ以降、化石燃料の
  石炭に手をかけ出しました。石油の持つエネルギーを蒸気のエネルギーに変換することによって
  巨大なエネルギー利用へ発展することが出来たのですが、より一層のエネルギーの塊を利用すべく
  20世紀に電気・磁力より、さらに原子力へと転換してゆきました。
  ではどうして、より大きなエネルギーの利用を求めなければならなかったのか。
  その原因を技術史の展開する論法では、上述のように、工業化、人口増、食糧不足などを
  挙げています。
  更に原因を追及していきますと、何故そのような社会形態になっていったのかという原因が
  知りたいところであり、それさえ解れば、現状の人間が際限なくエネルギーを求めることを何とか
  食い止めることが出来るのではないかと思われます。

3.何故、産業革命が必要になったか、根本原因は、人口の増加か。
  産業革命を引き起こさねばならなかった人類社会の事態の原因は果たして「人口増」なので
  しょうか。では、どうして、人口増の事態が近世18世紀頃になって問題になってきたので
  しょうか。人間は地球上での誕生以来、何万年も細々と生き抜いてきた結果、18世紀頃から
  「人間という生物形態の生存効率」が向上しだしたのでしょうか。「人間という生物形態」は
  遺伝子が自身の形態を改善し、向上させることが出来る構造を有しているのでしょうか。
  人類を創造した神の意図はどこにあるのでしょう。
  行き着くところ、「人類は結局地球上で自爆する」事になるのでは、としか思えません。
    人類は地球上に出現以来、ずっと「長生きしたい」と思い続けてきたのでしょうか。18世紀の
  人々が突然、それまでの祖先以上に「長寿を望んだ」とは思えませんが、結果的に人口増の
  社会現象に繋がっていったのです。
  極論になりましょうが、「地球温暖化防止対策」は、「人は長生きを望まないこと」としては、
  如何。「高齢化社会」「長寿人口社会」への変遷期にあって、皮肉な警告です。

  嘗てパスカルは「人間は考える葦である」と唱えましたが、「考える」だけではなく、「望ましい
  状態を考え実現すること」に一生懸命になる生物であるようです。
  従って、「人間は変化を望む動物である。」
  もっと端的に言い切ってしまいますと、「人間は欲望に生きる動物である。」となりましょう。

4.環境破壊防止なしに人類は生き残れない。
  どなたか「人類の生き残り作戦」を考えていないかと関連冊子をあさりました。手近な参考資料
  (茅陽一編集「エネルギーの百科事典」平成13年9月25日(丸善))より、参考意見を借用
  しました。
  (1)「エネルギーは、技術を媒介として人間の文明の基盤を作っている。」
     「技術の本質は人間性そのものと不可分である。」
     「人類の文明は、*土器*石器*青銅器*鉄器へと、道具の硬さが増し、用いるエネルギーの
      量が増え、質や効率も向上している。」
     「産業革命以前、人類にとってエネルギーは消費財であったが、それ以降、生産財になった。」
      (下図:「人類とエネルギー消費の歴史」参照)
     「エネルギー資源の変遷は、C(炭素)からC−H(炭化水素)を経てH(水素)へと
      転換しつつある。」 
     「エネルギーの選択とその利用をシステムとして『人間が自ら考える』によって
      人類と地球環境の共生に新しい姿が描けよう。」         

  (2)「ギリシャ神話プロメテウスが神々の王ゼウスから業罰の苦しみを永劫に受けることに
      なったのは、ゼウスの許可を得ずして、人類に「火」を教えてしまったことによるの
      ではないか?」「この業罰は、地球温暖化などの人類への足枷となっているのでは?」
     「業罰を解き放つ方策は
      (イ)地球環境への負担を軽くするリサイクル型エネルギーシステムを構築する。
      (ロ)エネルギー有効活用による省エネルギーをはかる。」
 これらの方策は、昭和40年代のオイルショック以来、国を挙げて取り組んできている既知の、
また既存のごくありふれた結論ですが、それから、一世代30年経った現在でも、解決への希望の
持てる状況になっていません。
 一度の世の中のシステムを替えることはむずかしいでしょうが、早く舵を切り替えないと、人類は
それこそ「プロメテウスの業罰」を受け続けることになりましょう。
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*** 平成18年12月8日 ***産業部技術顧問・中西久幸


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