平成17年末から平成18年初めの冬期は、近年にない寒い時節となりました。ところによっては、 気象観測始まって以来の積雪をみたところもあるようです。 ここ十数年来、地球上の気象は地球環境の悪化によって温暖化現象が進行しているので、 これからの冬期の気温は上昇する一方とばかり思っていた矢先、このような「厳冬」が忘れた頃に やってきたという感じを受けます。 ここ数年来、冬場の雪不足がスキー場の営業上、気になることであったのが、嘘のような気がします。 昭和30年代(38豪雪といわれる昭和38年)あるいは50年代(56豪雪といわれる昭和56年)にも、 氷点下の天候が来襲し、路面が凍結し、社会生活も一時期混乱したことがあったように記憶して いますが、それ以来大凡20年ぶりの「日本列島凍結現象」ではないでしょうか。 思うにこの半世紀ほど、人類は自らの住処である地球を好きなように痛め尽くしてきたので、 地球の運行を管理している天の神様が、地球上の「間借り人」に、ちょっとお灸を据えたのかも知れません。 極東日本への厳冬再来は、地球上でただ一ヶ所の異常気象現象というわけではないようで、 欧州の猛暑や北極での暖冬化などの異常気候現象も地球全体の気象異常から見れば、それぞれに 何等かの関係があるように思われます。 この地球上で寒さに耐えて、雪害と闘っている国や地域の人々に思いいたすところです。 毎年のことながら「寒さや雪との共生」は、地球を間借りして生きていく人類の神様への「家賃」かも しれません。宿命とはいいながら、誠に厄介なことであることには変わりありません。 「寒さ」は如何様にも処理し、巧く付き合って行けそうですが、こと「雪」となると、巧く付き合っていける 面もある一方で、大変な手間の掛かる厄介事で、地球上の寒冷地帯の人々はそれぞれに「雪」との 戦いを強いられているのです。目次に戻る
平成17年12月末頃の一つの「雪害情報」として、つぎのような資料を引用します。 「雪による死者26人にのぼる。日本海側を中心に大雪による被害が出て、内閣府は27日、雪による 全国の被害状況をまとめたところ、屋根の除雪作業中に転落するなど死者数は福井県9人、 新潟県5人など全国で計26人、けが人は計280人に上っている。 大雪による12月最深積雪を記録したのは1道1府22県の90地点で、鹿児島市では88年ぶりに 記録を更新したという。また、全国の10地点で年間の最深積雪を更新したとのこと。」 新年に入ってもこれらの「雪害」は続いており、豪雪地帯の雪との戦いはまだまだ、今冬いっぱい続き そうです。予想外の時代的雪害ですので、十分な対応策が無く、頭の痛いところです。 豪雪地帯に於ける雪との戦いは今に始まったことではなく、古来の課題です。時代時代で人々はいろいろに 対応されてきているのでしょうが、これと言って抜本的に妙案が出されたわけではないのです。それだけに この地域に人々には、解決策のない歴史的な歌題というべきでしょうか。積雪期のみ地域から逃げ出す わけに行かないので、諦めが先立つことになるのでしょう。温暖な地域に住んでいる人々には思いはかれない 気象現象です。 因みに、雪の情報については、社団法人「雪センター」という団体が発信しています。 (関連ホームページ・アドレス http://www.yukicenter.or.jp/infosnow/index.html) 目次に戻る
<除雪対策・融雪システム>
雪対策として、まず、(1)雪が降らないようにならないか、(2)降ってくる雪を制御出来ないか、さらに、 (3)雪が積もらないように出来ないか。(4)積もった雪を消す、融かす、流す、など除去する ということになりますが、(1)(2)項は、現在人間が持ち合わせている技術力では、物理的に実現不可能で、 自然の猛威には対抗できません。これら全く非現実的事項の実現は諦めますと、残る具体的雪対策としては、 (3)や(4)項に拠らざるを得ないことになります。 前にあげた「雪センター」で行っている技術検討は主に以下の4項目に分類することが出来て、このうち、 具体的に集落雪対策としているのは、雪崩対策および情報系(地域防災)とのことです。 防雪対策施設 1.吹雪対策 2.雪崩対策 3.路面対策(流雪溝、消雪施設、融雪施設、薬剤散布、凍結抑制塗装など) 4.情報系統(気象観測、制御システム、情報提供システム) いずれの対策も「雪」を社会生活に障害になる物質として取り扱われています。 嘗て「雪博士中谷宇吉郎」氏が「雪は天からの玉梓である」と言われたように、「せっかく天が 地上の人間に恵んでくれた贈り物」ですから、天然資源と考えて、有効に活用する方法を模索したい ところです。すなわち、「雪は液体でない固形の水」と考えて、雪を素材とする何等かの産業が興せないか という発想です。 ご専門の分野では、上述の「雪センター」以外に、多分野で多くの関心高い人々が活動されていますので、 それらの成果がいつの日か、実を結ぶことでしょう。 学会では「日本雪工学会」があり、社団法人「日本雪氷学会」、さらには、克雪や利雪に加えて、 雪との共生を考え、北国の生活を考えていくという「北国くらし研究会」なるものも活動されています。 ところで、現実問題として、今年の新聞紙上を賑わしている「一般家屋に積もった屋根の雪除去」です。 豪雪地帯に生活している高齢者で、除雪作業が出来なくて、屋根の雪に恐怖の毎日を送っている事態を 早急に解決しなければ成りません。屋根に登る雪掻き下ろしの重労働に代わる個人で行える簡易の対策は ないか、頭を捻らねばなりません。目次に戻る
<雪とのつきあい方>
以下は、誠に無責任な放言になるのですが、まともに雪と戦うのはあきらめて、神様の為されるままと いうのも何かしゃくに障るところですので、一言提示したまでです。 これらは破天荒な、また荒唐無稽な「雪とのつきあい方」空言ですので、提案したからと言っても、 雪害が緩和され、寒さが和らぐわけではありません。 (1)雪の重さを利用して、エネルギーを創り出す。 (2)雪を渇水対策倉庫に貯め込む。 (3)雪の雲を海の上で処理する。 (4)積雪期、地下都市に潜るか、避雪地帯へ民族移動する。 (5)地球の自転軸をあれこれ振る。 などの提案は如何でしょうか。誰でも考える事項で、すでに多くの先人がもっと素晴らしいアイデアを 提供していることでしょう。豪雪に苛まれている地域の方からは、冗談もほどほどにせよとお叱りを受ける でしょうが。 締めくくりとして、雪国(積雪寒冷特別地域)の方々に、力強い味方を紹介しておきます。 これは、社団法人雪センターの方の雪に対する随想です。 「雪国には、雪で閉ざされた時期を生き抜く衣食住の知恵がある。また、自然の雪ダムで水が豊富で、 食料自給率も高く、米、酒が旨く、自然が豊富でもある。 21世紀に世界が抱えるであろう問題は、地球温暖化、食糧問題である。日本も確実に直面する であろう。これを克服する素地は暖国にはないが雪国にはある。21世紀は雪国の時代ではないか。 これから、雪国の反攻が始まる。」 誠に勇気づけられる発言と言えましょう。
*** 平成18年1月31日 ***産業部技術顧問・中西久幸
ご感想は、E−mail先へ、ご投函ください。
敷島工藝社のフロント・ページに戻る。