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<その1>日本の<包む>文化のあれこれ <その2>風呂敷の多機能(Flexible)世界 <その3>風呂敷に関する包み物あれこれ *************************** |
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********* <その1>日本の<包む>「フレキシブル」文化のあれこれ*********** 1.「ふ」三品 *ふろしき(平包み) ー包む対象物の形状や数を問わないで、自在に物を包める。 (手先の器用な日本人に向いていた。) (西洋文物)ーかばん、トランク、バッグ、リュックサックなどは、包む物が限定され、 形状や数に制限あり。(手先が不器用からくるのか?) *ふんどし(ふどし) ー体形に関係なく、だれでも使え、一枚の布地に戻せる。 (西洋文物)ー各種サイズのパンツ、だれでも一種のパンツでは用を足せない。 *ふりそで(きもの) ーやせていてもふとっていても、自在に格好がつく。サイズ・身長関係なし。 生地は元の一枚の布地に戻せるリサイクル品。 (<ミアゲ>所作) (西洋文物)−身長や体形に関係して、個別の服装が必要。 生地はリサイクルできない、せいぜい雑巾へ格下げ。 2.日本人に関わる「包む」フレキシブル事物あれこれ *身体を包むーきものやかぶりもの VS 洋装品・ドレスや帽子・ハット 体の大小、年齢に関係なく自由に使える 寸法に応じて使用される *人間を収容するー日本家屋ー障子・襖・衝立・几帳 VS ハウス・壁・ドア 個室にもなり、集会場にも用途替え可。 人数に制限があり、用途が限られる。 (嘗て庶民のくらしは、居間・台所・寝間も一部屋)(ドアは引き戸と異なり空間が要る) (参考本:辰巳慧「風呂敷文化と袋の文化」晃洋書房(2001年11月30日) *心・神を抱くー自然・万物・八百万神 VS 一神教 全てを認め、受容できる。 排他的ー従って今でも争いが絶えない。
***********<その2>風呂敷の多機能世界***************** 風呂敷の機能を大別すると、 (1)守るー荷物の保護や人体の覆いなど。 (2)運ぶー物品を運搬する。 (3)隠す・覆うー物や人体をカバーする。 1.多機能性「包む」−風呂敷の多機能性の利点をあげると、 <1>どんな形のものでも自在に包める。 <2>複数のものを同時に包める。 <3>紙製の包みのように使い捨てではなく、何度も使える。 <4>汚れても洗えて何度も使える。 <5>小さくたためて、持ち運びに便利。 <6>寸法、素材、色柄を選択でき、用途別に使い分けできる。 <7>重いものでも壊れやすいものも、包める。 2.落語に見る風呂敷の効用 間に合わせ着物ー「羽織るもの」あるいは「頬っ被り」として *「羽織るもの」:古典落語人情話「文七元結(ぶんしちもっとい)」 長屋の夫婦の貧乏暮らしの情景として<亭主>が<かみさん>の身なりを説明するのに、次のくだり有り。 「・・・おれの着てるこの着物ァ、こらァ女物だ。表へ出られねえんで、かかァに印半纏(はんてん)着させて、 俺ァかかアの着物ォ着て出てきたんだ。かかァは家に、腰巻ァねえや。”洗っちゃって、ねえ”てやがる。 半纏だけじゃ座ってもいられねえから、風呂敷を腰に巻いてるんだい。なァ、その風呂敷にゃ紋が付いてるんだァ。 紋付きの腰巻だァ。そういうような恰好をして、かかァは家に待ってるんだ。・・・」 (古今亭志ん生「志ん生人情ばなし」志ん生の噺(3)ちくま文庫 筑摩書房 2005年4月10日) *「頬っ被り」:古典落語「風呂敷間男」(「風呂敷」「褄重ね」) 女房が間男を引っ張り込んでいるところへ亭主が帰ってきて、間男を隠した押入れの前に座って動こうとしない。 近くに住む棟梁に相談すると、棟梁が、他人事のように間男のはなしをし、座り込む亭主の頭に風呂敷をかぶせて 「その間に間男を逃がしてやった」と実演を兼ねて本当に、押し入れの間男をにがしてやる。 風呂敷をとって亭主曰く「ちっともわからん」。 (参考1)風呂敷に関係した古典落語「風呂敷丁稚」 隠居が丁稚を連れて歩いている。老人のくどさで「ここはどこじゃ」「おまえいくつや」 「風呂敷包み持ってなはるか」の三つを何べんもしつこく尋ねる。そのうち風呂敷包をトンビにさらわれて しまう。その結果、「風呂敷包みもってなはるか」の問いに丁稚「さっきとられました。」それを聞いて 隠居「それでいうこと一つ助かった。」 この話の興味あるところは、 (1)現代社会問題になっている高齢者の老人特有の現象を取り込んでいること。 (2)かっての日本の庶民生活では、風呂敷は日常生活に必需品であったこと。 (参考2)古典落語の音源 *「風呂敷」−三遊亭円遊、三遊亭円楽、古今亭志ん生、古今亭志ん朝、立川談志などのSPレコード。 *「風呂敷丁稚」−桂春団治、立花家花橘などのSPレコード。 3.防災用具として活用が期待される! (1)真結び(2)リュックサック(3)頭巾(4)マスク(5)赤ちゃんの抱っこ用(6)担架用具 (7)三角巾(負傷した腕釣り)(8)包帯(9)エプロン(10)枕(11)マフラー(12)スカーフ (13)座布団(14)敷物(15)仮上着(寒さしのぎ)(16)おむつ(17)のぼり(18)仕切りカーテン など、避難時あるいは避難所における使い道は多々ある。 4.「エコライフ」にもってこいの「風呂敷活用方法」あれこれ *スーパーのレジ袋の代わりに何度も使えて、ごみが発生しないーリサイクルとごみ減量
********** <その3>「ふろしき」の雑物包み ************* *ふろしきの包み方と結び方(真結びなど) (1)お使い包み 四角いものを包む (2)ひっかけ結び 長いものを包む (3)瓶結び(ワインボトル包み)ガラス瓶二本包み(4)すいか包み 丸いものを包む (5)手提げランチ包み 弁当箱を包み手提げにする(6)ブック包み 本二冊を手提げにする (7)ティッシュ包み ティッシュボックスを包む (8)インスタントバッグ 三角形に折った風呂敷を三回結ぶ (9)ふろしきリュック 風呂敷二枚を物包みと肩掛紐に使う (10)ふくさ包みー慶事:右上の右包み 弔事:左上の左包み その他:包み上がりの形より、花びら包み、カメリア(ツバキ)包みなど。 *ふろしきの持ち方・使い方 (1)頭にのせる (2)首に下げる (3)手にさげる (4)腕にかかえる (5)肩に背負う (6)肩にのせる (7)腰にさげる (8)天秤に担ぐ など、体のどの個所にも、如何様にも使える。 *ふろしき仕様 縫い目縁を天(上)として、(丈)の下部を地(下)とする。 右縁:右耳ー巾ー左縁:左耳 (1)大きさ(単位:幅ー約34cm)(尺ーくじら尺) 七幅(238cm)(Gサイズ)ー引っ越し荷物まとめ 六幅(205cm) ー布団一組包み 五幅(180cm) ー大きい荷物運びやこたつ上掛け 四幅(128cm)(座布団二客分)ー座布団二枚包み 三五幅(120cm) 三幅(105cm)(Lサイズ)ー(大ふろしき)テーブルクロス・ワインボトル一本・菓子折・贈答品 二四幅(90cm) ーバッグ、壁掛け、暖簾 二尺幅(75cm)(Mサイズ)ー(標準)菓子折り・ワインボトル包み 二幅(68cm) 一尺三寸幅(50cm)(Sサイズ)ー(小ふろしき)弁当包み・ティッシュ包み・カバー・ナプキン・クロス 中幅(45cm) 中幅(約45cm)ー熨斗袋包み (2)色 紫ー長寿を表し、贈り物、御礼物 赤ーおめでたい、よろこびのしるし 青(藍・紺)ー葬儀や悔みごと 緑(うぐいす色・利休色)ー葬儀 (3)図柄と文様 慶事ー宝巾着:熨斗など吉祥文様 弔事ー蓮・蘭など 松竹梅・鶴ーおめでたい吉祥紋 唐草ー幸せ・長寿・繁栄を願う紋(古代エジプト文様より、長寿や子孫繁栄の印) 花鳥風月ー四季の自然を表す 宝つくしー福や徳を招く紋(小槌・鼓・勾玉・宝珠など) 小紋(麻型・鮫小紋)ー江戸小紋・武家の袴 無地から紋様入りへー区別目的、宣伝目的、唐草紋様は明治30年ごろから、大量生産された。 嫁入り道具用としては、縁起の良いおめでたい紋様が多用された。 (参考)関西ーあでやかなもの、関東ー渋いもの (4)素材 絹・絽ー正式な場や目上の人への贈り物 木綿ー丈夫で使いやすい、大きな物や重いものの運搬用 化学繊維ーレーヨン・ナイロン・ポリエステル 撥水性素材によるふろしきー傘包み、防水包みとしてのカバーリングなど。 その他ー袱紗・油箪・ちりめん・つむぎ・友禅 (5)用途:祝儀用ー松竹梅柄を中心として色調の明るいものが多い。 結婚祝用:友禅染の縮緬(和服正装用)ナイロン(普段用)木綿(運搬用)三点セットあり。 不祝儀用ー香典返し、法要引き出物など、地味な色を選ぶ。 *ふろしきの歴史 (1)奈良時代ー正倉院御物の包み(舞楽装束や楽器などを包む)や僧侶の袈裟など。 (2)平安時代ー「古路毛都々美(ころもつつみ)」「平包み」−収納用 運搬用として頭上運搬用具として四天王寺奉納扇面古写経下絵(1188年)など。 (3)室町時代ーお風呂の着物包み、蒸し風呂での床敷 (注)大湯殿を建て近習の大名衆が一緒に入浴する足利将軍の習い。入湯時・湯上がり時に 身仕舞いするための用具で、他人と区別するため、家紋や屋号を染め抜いた。 (4)江戸時代ー銭湯での用具包み、非常持ち出し用具、行商用具 (注1)天和(1681〜1684)・貞享1684〜1688)頃から、物を包む物を風呂敷と言い始めた。 (注2)江戸城下の商人(三河・遠江・伊勢・近江など)の商標風呂敷で武家屋敷に出入り。 元文三年(1738)〜寛保三年(1743):大丸・下村彦右衛門ー大丸紋の萌葱色風呂敷を 商品運搬に多用。 (注3)葛飾北斎や歌川広重作品に多く描かれている。 (5)明治時代ー結納、お宮参り、商売用具、通学用品、贈り物 (参考資料)額田巌「包み」ものと人間の文化史20 法政大学出版局 (1977年4月1日) (参考1)古い語源「平包み・ひらつつみ」平安時代から絵画に描かれてきたが、室町時代になり風呂の流行で、 「風呂敷・ふろしき」が宝暦年間(1751ー1764)頃まで併用された。寛保年間頃からもっぱら「風呂敷」が 常用されるようになった。(日本国語大辞典・第二版・小学館(2001年)) (参考2)出雲地方の「嫁入り風呂敷」の習慣 定紋や吉祥紋様染ねの「嫁入り風呂敷が定着し、嫁ぎ先で収納・運搬・贈り物などに用い、 くたびれたら刺し子などで、強度を補い、ほころびたら継ぎ当てをして、ぼろぼろになると雑巾として利用。 全国に紺屋と呼ばれた藍染め職人が染めていた。(高槻市の城下町にも紺屋町が残っている) *「ふろしき」の老舗 宮井株式会社 創業 1901年1月1日(明治34年) 設立 1937年2月1日(昭和12年) 資本金 1億円 代表者 代表取締役社長 宮井宏明 取扱商品 風呂敷、ふくさ、儀式用品、結納用品、家庭用品、和装小物等の企画・製造・卸売 所在地 京都本社 〒604-8163 京都市中京区室町通六角下ル鯉山町510番地 TEL:075-221-0381(大代表) FAX:075-255-0282 東京店 〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町2丁目10-9 清紅ビル2階 名古屋支店 〒460-0003 名古屋市中区錦2丁目8-26 宮井名古屋ビル2階 出版物 子供向けの絵本 エコライフにも役立つ!ふろしき大研究 くらしの知恵と和の文化 江口克彦 監修・宮井株式会社 2005年11月18日 PHP研究所 *「ふろしき」文化研究団体例 (1)ふろしき研究会 代表 京都市 森本知都子 1992年(平成4年)発足 包み方約60種類考案し、広報活動している。 (2)日本風呂敷協会 事務局長 久保村正高氏 宮井株式会社に本部を置く、 2001年(平成13年)発足 風呂敷文化復活と普及を目的とする。 (参考情報)NHK−Eテレ H.28.10.23(日)23:00-23:30「美の壺」 *紋様ー「斜め取り」−包んだ時に表面に多彩な表柄が出る。 −ぼかしー引き染職人による抜染剤での色抜き作業により、包んだ状態で多様な構図が出る。 *包み方で、形を作る。−「うさき」「あさがお」など。 *包み物の内容によって風呂敷紋様を使い分ける。特に日本伝統文化(能楽など)関係者。 −名残の一例:「ふろしき」の常用官庁:検察庁 検察官は、現在でも伝統的に書類等を持ち運ぶ際に風呂敷を使用している (証拠品や凶器等、通常の鞄には収まりきらない物品が多いことも理由)。 柄は検察独自の物を使用しており、さらに地検ごとにもその柄は異なる。 *ふろしき記念日 つつみ(2月23日) (注)つつむ(2月26日) *世界各国の類似品 (1)ポジャギ(韓国):残り物の布を縫い合わせる (2)パオフー(中国):収納用具、贈り物 (3)ボーチャ(トルコ):公衆浴場への用具包み (4)ボクジェ(イラン):公衆浴場用具 (5)ダスタルハーン(ウズベキスタン):弁当包み (6)パットヌース・ポーシェ(アフガニスタン):接待用、贈答品、農作物運搬用具 (7)バンガラ(ネパール):襷がけで背負う道具 (8)ルマール(インド):日用品運搬用具 (9)ブンディ(ヴータン):贈り物包み、収納用具 (10) マンタ(ペルー):昼間は運搬包みー夜間は毛布や衣服代わり ********************************************