平成社会の探索
漿
<「知恵の会」への「知恵袋」>
ー第139回知恵の会資料ー平成28年9月25日ー
(その 84)「き・木・樹」
ー<木の楽器:拍子木>ー
******** 目 次***********
<その1>木の楽器のあれこれ
<その2>拍子木の聞こえる音空間
<その3>拍子木関連の一口メモ
<その4>拍子木風の音が聞ける音楽作品
***************************
********* <その1>木の楽器のあれこれ***********
木製の楽器を邦楽系と洋楽系別に列挙すると次のようになる。
1.邦楽系
1−1.拍子木類
(1)拍子木:歌舞伎、人形浄瑠璃、その他の邦楽で使用される体鳴楽器。柝(き)。
樫などの硬い木材で作られ、直方体形状で、両手に持って打ち鳴らす。
(拍子木に関しては、詳細を後述する)
(2)笏拍子:(しゃくひやうし、またはしゃくはうし)
雅楽の声楽歌舞伎囃子で用いられる相互打奏板(板型クラッパー)といわれる打楽器で、
笏を二つに切り離した形状の木片を、左右の手に持ち、片方の平面に他方の切り口を
打ち付けて音を出すが、二片の木片の下端は離さない。
長さ約36cm、上部幅やく7cm、下部幅約5.5cm、厚さ8−10mm。
用材は、黄楊、梅、櫻など。
神楽・東遊・催馬楽などでは、太鼓や鼓を用いず、歌を歌う人がこれを打って拍子をとる。
(「源氏物語」では、「はうし」あるいは「さくはうし」として数カ所に
記されている。)(出典:池田亀鑑「合本源氏物語事典」東京堂出版)
(3)板(ばん):数枚の板を同時に打ち合わせる「拍板・拍」という相互打奏板・板状クラッパーで、
一枚の板に槌などで打つ単打奏板に分けられる。
沖縄地方では、中国系の板の一種と思われる「三板(さんばん)」が用いられる。
(4)ざさら:日本の民俗芸能用体鳴楽器の一種で、「すりざさら」と「びんざさら」がある。
「びんざさら」は、木または竹の小切片を複数枚、紐で綴じ合わせ、両端の取っ手を操作して
音を出すもの。特に田楽踊用楽器。
「すりざさら」は、竹の先を細かく割った刷毛状部を鋸歯状の棒で摺り合わせるもの。
(5)コキリコ:日本の民族楽器。長さ25cm前後の細棒を両手に持ち踊りながら打ち合わせる。
(6)きぬた:歌舞伎下座の体鳴楽器。秋の田園情緒をあらわすためn、板或いは石の上で布を槌で打つ。
1−2.木魚類
(1)木魚:読経のテンポをとるときの仏教や歌舞伎の黒御簾音楽に用いられる体鳴楽器。
寸法は片手に握れるものから、横幅50cmを超えるものまで大小さまざま。
ホウ(昔、役所で呼び出しの合図に打った穴を開けた木)の木、や桑を材料とする。
フェルトや柔らかい布で先端を覆ったバチ(撞木・しゅもく)で打つ。
内部は空洞で背面にスリットが開けられている。
歌舞伎では、寺院や墓場など、さびしい郊外の場面などに打たれる。
(2)魚板:木製の長い魚状のもの。魚版、魚ほう(扁:木+旁:邦)、開ばん(「ほう」をばんと読む)、
魚鼓ともいう。木槌で打つ。昼夜不眠の魚を喩えたもので、修行僧の怠惰を戒めるため
とも言われる。
1−3.木版類
(1)木版:木製の板で、単に「板」「板木」「版木」「接版」「更版」ともいう。
厚い長方形の木の板の上辺を角切りしてつるしたもの。木槌で打つ。
置かれている場所から「僧堂板」ともいわれる。
作法の合図や、外来者の訪問の便に、歌舞伎では下座楽器として使われる。
(2)木鉦:(木柾とも)仏教用法具の一種。声をあげて唱題や読経をするときに打ち鳴らすことで、
聴覚的にリズムを整える。円形または枕型の物も有る。日蓮宗・法華宗などで用いる。
他の宗門の木魚に当たる。小さな座布団状の台の上に置かれ、先端に木製の球が付いた
バチで叩くと、木魚よりも甲高い音が鳴る。用材は欅(ケヤキ)や桜(サクラ)など。
内部は空洞。
2.木琴
(1)清楽(しんがく)用:舟型の共鳴箱の上に、17本の木片を音高順に並べ、
先端に木製球の頭をつけた二本のバチ(撞木・しゅもく)で打つ。
(2)歌舞伎用:黒御簾音楽で用いる楽器。舞踏の場面に用いられる。
音の感じが水を連想させるとして、魚の躍り、櫓拍子、波の動きに拍を打つ
目的で使用される。特に調律はない。
(3)シロフォン(Xylophone):広義では、木琴類すべてを含むが、木製音板を
ピアノ鍵盤と同じ順番に並べ、マレット(ばち)で叩いて音を出す楽器。
類似の各国の楽器ーフィリピン:クリンタン・ア・カヨ、タイ:ラナート・クエなど。
(4)マリンバ:アフリカが起源とされる。シロフォンよりも鍵盤が広く厚く造られており、
深みのある音色を表現でき、鍵盤の下部に各音階によって長さを変えた共鳴用の
金属管が設けられており、その下端を閉じることにより、鍵盤の音に共鳴し増幅させ、
さらに豊かな音色となる。音域は通常4オクターブ。
3.洋楽系
(1)木管楽器
嘗ては木でつくられた管状のものが多かったため、奏者の唇の振動によらないで発音する管楽器の
総称であった。今日は金管楽器以外の管楽器を意味する。フルート、サクソフォン、オカリナなど。
振動源の種類で、一枚リード・二枚リード、フリーリード、エアーリードなどに、
共鳴系の種類で、閉管式、開管式などに、分類される。
フルート属:コンサートフルート、アルトフルート、バスフルート、ピッコなど。
リコーダー属:ソプラノリコーダー、アルトリコーダー、テナーなど。
横笛属:龍笛、能管、篠笛など
尺八属:尺八、一節切、など。
クラリネット属:ソプラノクラリネット、アルトクラリネット、バセットホルンなど。
サクソフォーン属:ソプラノサクソフォーン、アルトサクソフォーンなど、
オーボエ属:オーボエ、イングリッシュホルン、オーボエダモーなど。
ファッゴット属:ファゴット、コントラファゴットなど。
その他:パンパイプ、オカリナ、スライドホイッスル、チャルメラ、篳篥、ハーモニカ、
アコーディオン、バンドネオンなど。
(2)クラベス CLAVES (イタリア語・Legnetti・レニェッティ、英語・クラヴェエイズ・クレイヴス)
分類:二本の棒状の木を打ち合わせることで、音を出す打楽器・体鳴楽器。
拍子木やパリートス(PALITOS)に類似の楽器。
材質:ローズウッド、黒檀、グラナディラなど。ガラス繊維や合成樹脂製もある。
形状:棒の長さは17cm〜30cm、太さは約2.5cm、形状は円柱形または四角柱。
演奏方法:利き手に持った木片がばちの役目、もう一本が音を鳴らす楽器。
ジャンル:サルサなどソンを起源とするラテン音楽の基本リズムークラーベーを表現する楽器。
ジャズやポピュラー音楽、クラシック音楽にも使用例有り。
(3)ウッドブロック
分類:中空の堅い木に、割れ目が入れてある木製の打楽器で、体鳴楽器。
材質:ロックメイプルやホワイトアッシュなどの硬質木材が使われる。
形状:四角い箱形のものと丸い筒状のものがあり、後者には、円筒にスリットを入れたものと
二個をまっすぐにつないだものがある。
演奏:シロフォン(木琴)のマレットやスネア・ドラムのスティック(バチ)で叩く。
音質:澄んだ音が出て、時計の音の効果にも活用される。
(左)箱型ウッドブロック(右)筒型ウッドブロック
(4)カホン
分類:箱型などの木で出来ている体鳴楽器の一種。ペルー式やキューバ式などあり。
材質:箱型の前面(両手で叩く面)は、3〜4mm厚のバーチ、ブビンガ、シナ、チーク、エボニーなど。
形状:長方形の箱型で、標準型は30x30x48cm程度で、後面には、径10cmぐらいの穴が空いていて、
叩かれた前面の音が内部で反響して、後方に逃げるようになっている。
演奏:箱の前面を叩き、後ろの穴に反響させる。叩き面の前面の裏側にはバズ(Buzz)音がでるように、
響き線や鈴が取り付けられている。
(左)カホンの前面(右)演奏方法
(5)カスタネット(英: castanets [?kast??n?ts]、西: castanuelas, palillos)
分類:木製打楽器で、体鳴楽器。スペインで発達した楽器、スペイン民族音楽に欠かせず、スペインの舞踊
フラメンコなどに用いられる。
材質:高級なものは黒檀、ローズウッド。プラスチック製(教育楽器など)や金属製もある。
語源:スペイン語『栗』-『カスターニャ』(castana)。ギリシャで栗の木で作っていたからとも、
形が栗の実に似ているからとも。
形状:手のひらに納まるくらいの丸い貝型の木片を2枚合わせる。
演奏:貝型木片を打ち合わせ音を出す。木片の打ち合わせる側はほぼ平らで、中央にくぼみがある。
端にひもを通してつなげ、このひもに親指を通して楽器を保持したり2枚の開き具合を調整したりする。
音程がわずかに異なる2つの楽器を一組として演奏し、高い方の楽器を右手で持つ。
音程の高い方は「雌」、音程の低い方は「雄」。
***********<その2>拍子木の聞こえる音空間*****************
<拍子木(ひょうしぎ)>
「拍子」を取るための木の音具。柝(き)。手に持って打ち合わせると、チョン、チョンと高い澄んだ音が出る。
日本では古来、以下の様々な用途に用いられる。
紫檀、黒檀、花梨、樫など、堅い木材を細長い四角の棒状に切り、2本1組にして紐で男結びにしてつなぐ。
使わないときは自分の首にかけてぶら下げる。数え方の単位は「組」「対」。
1.楽器
雅楽、祭りのお囃子などのほか、インストルメンタルなど、現代音楽の打楽器として用いられる。
2.相撲
「呼出し」が拍子木を打って、力士の名を呼ぶ。大相撲の呼出しが使う拍子木は、桜の木が使われる。
3.舞台
歌舞伎の演出では柝(き)を用いるが、芝居の開始時合図として、また幕切れで打つ、
役者の足取りに合わせて打たれたるときは、動作や物音を強調する(ツケという)、
床に置いた板(ツケ板)に打ちつける。
人形浄瑠璃でも同じような演出があり、「ツケ」は拍子木を「ツケ板」に打ち付ける音のこと。
見得をきったり、立ち回りなどの効果音として活用される。
4.紙芝居
昭和初期から30年代、下町で人気のあった街頭紙芝居屋は、自転車で町々を回って、拍子木を打ち鳴らし、
子供を集めて飴を売り、紙芝居を見せた。
5.夜回り、夜警
警防団や消防団などが夜、見回る時に、 「戸締り用心、火の用心」と声をあげながら、拍子木をカチカチッと
打ち鳴らして歩く。
6.ボクシング
ラウンド終了10秒前を知らせるため、タイムキーパーが拍子木を打つ。日本のみならず世界共通だか、
木で打つのは日本のみでアメリカ等では機械で打っている。
7.宗教行事
祭礼の時、 山車(だし)の運行に、拍子木の音によって、止まれ、ススメ、回れ、などの合図をする。
拍子木を使う進行役が「拍子木」と呼ばれる。
8.仏教
宗派によっては、読経の折などに拍子木で拍子をとる。
天理教のおつとめに使う鳴物のひとつ。お歌の拍子をとるために使われ、鳴物の中でこの拍子木が芯となって
つとめられる。
********** <その3>拍子木関連の一口メモ*************
1.拍子木の漢字「柝・き」
漢和辞典によると、「柝・たく」は、ひょうしぎのこと、拍子木を打って警戒すること、また木がさけること、
と解説されている。
旁の「斥(せき)」は、「しりぞける・おしのける」、「ゆびさす」「うかがう」「ひらく」などの意。
扁には、手偏(タク・ひらく、さく)vs 「折」は、おる、まげる、くじく。
言偏(ソ・うったえる、そしる)vs 「言斤」(キン・コン)よろこぶ、やわらぐ。
さんずい扁(ソ・さかのぼる、むかう) vs 「沂」(キ)ほとり、へり、ふち。
と応用される。
2.拍子木の関連用語
(1)拍子木切り
野菜などを小さく細長く、拍子木状に切る料理法。おおむね1cm角で長さ5cm程度に切る。
根菜類を揚げ物や煮物にする場合に使われることが多い。
千切りはこれよりもっと細く、短冊切りは平たく切る。
(2)送り拍子木
夜、江戸の町角に人の姿が無く拍子木の音だけが響くとき、「送り拍子木の妖怪が出た」と言われた。
3.花菱アチャコの拍子木
花菱アチャコ(1897年7月10日 - 1974年7月25日)大正・昭和期の漫才師、俳優。本名:藤木 徳郎。福井県勝山市出身。
生家は法沢寺。幼くして両親とともに大阪に移り住む。父仏壇職人。遊芸に興味を持ち1913年に15歳で
新派山田九州男(山田五十鈴の父)一座入り、千日前敷島倶楽部で初舞台を踏む。
漫才に転向し「花菱アチャコ」を名乗り菅原家千代丸と組む。
1925年、吉本興業入社、浮世亭夢丸、千歳家今男とコンビを組む。
1930年、当時吉本興業で総支配人の座にあった林正之助の勧めに従い、横山エンタツとコンビを組む。
『早慶戦』(水原茂リンゴ事件)などの「しゃべくり漫才」で人気を博す。
戦後間もない時期には、長谷川一夫の『銭形平次捕物帳』など、映画の時代劇等でバイプレーヤーとしても活躍。
長沖一原作ラジオ番組『アチャコ青春手帖』大ヒット作。浪花千栄子と共演した『お父さんはお人好し』も人気を博し、
1959年に吉本興業が演芸部門を再開させると、アチャコは吉本の一枚看板として吉本バラエティの初期を支えた。
テレビ高度成長期に、「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」や「さいなもうー…」の台詞で一世を風靡した。
1974年7月25日、直腸癌のため死去。77歳没。戒名は阿茶好院花徳朗法大居士。
芸名の「花菱」は、生家の家紋が由来。「アチャコ」は、「鬼笑会」に所属してまだ無名だった頃、
幕切れに先輩役者の「アッ!」の合図で「チョン!」と拍子木を打つ際に上手くいかず、先輩役者からつけられた
あだ名「アチョンの子」が転じたもの。「コ」の字がよく女性と間違われた。
4.楽器としての拍子木の値段(新潟県長岡市・且O島屋楽器店の例)
拍子木 樫9寸 一組3500円 樫尺2寸5分 一組5500円 花林7寸 一組10,000円 花林8寸 一組12.000円
************ <その4>拍子木風の音が聞ける音楽作品************
クラベスー音源例:スティーヴ・ライヒ「木片のための音楽」ー5組のクラベス用作品
ウッドブロックー音源例:ルロイ・アンダーソン「Syncopated clock」
スターン・ジョーンズ「Riders in the Sky」
ーA.Fiedler指揮Boston Pops演奏
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申酉人辛
平成28年8月20日 *** 編集責任・奈華仁志 ***
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