平成社会の探索


ー第60回知恵の会資料ー平成18年2月5日ー

「知恵の会」への「知恵袋」


(その4)雑多な「漬け物」メモ書き

<日本人の漬け物>

 日本人と漬け物の歴史を物の本で辿ってみますと、次のようになります。

(1)有史以前
 昔の人々が海水から塩を採ることを覚え、岩塩を知っていたはずです。したがって、塩を用いての野菜や
肉類の食物保存に塩が重要なものであることも、遙か昔から知っていたであろうと推測されています。
漬け物は乾燥品と共に、人類が知った最古の食品加工法であったと言えます。
 漢字の「酉」を扁とするものに多くの「漬け物」に関わるものが認められます。
        (<漬け物の漢字「酉」>参照方)
 資料に依りますと、2000年前既に、塩漬けによる食品保存が確認されとのこと。

(2)奈良時代
 塩で野菜の茄子・瓜・蕪(かぶ)、果実の桃などを漬けて寺院での僧侶の食用とされていました。
  8世紀前半の天平年間に瓜、青菜の塩漬け木簡記録があり、塩漬け以外に、醤(ひしお)漬け、
酢漬け、味噌漬け糟漬けなど、数種類の漬け物が記録されています。万葉集にも漬け物に係わる歌が
収録されています。     (<万葉集の漬け物>参照方)

(3)平安時代
 漬け物は宮中の重要な副食となり、「延喜式」(927年)に、春の素材として蕨・茄子・蕗・瓜などが、
秋の素材としては茄子・生姜・柿・梨などが、塩・酒粕・もろみ・味噌などに漬けられるようになって
います。現在でも食する「漬け物」は千年以上の歴史があることになります。

(4)鎌倉・室町時代
 鎌倉期、「酢漬け茗荷」「胡瓜(きゅうり)甘漬け」などが精進料理に取り入れられ、漬け物は禅宗
寺院でさらに発展していきます。沢庵漬け(生干し大根を糟や麹を加えて塩漬けにしたもの)が出回り
始めます。漬ける材料も味噌、酒、味醂、醤油の醸造品の誕生と共に、「味噌漬け」「糟漬け」
「醤油漬け」が行われるようになります。
 南北朝頃、京都鞍馬でアケビ、スイカズラ、マタタビの新芽を塩漬けにした「木の芽漬け」、京都
醍醐で種種の植物の新芽を塩漬けにした「鳥頭布(うどめ)漬け」が珍重されはじめました。
 室町期に味噌付けの「香の物」が「香香」「新香」「おこうこ」「おしんこ」などの言葉として登場し、
名酒の産地奈良の糟漬けが「奈良漬け」として出回り、後に野菜の糟漬けの総称になります。
 茶の湯や聞香(各種の香をききわける)が盛んになり、漬け物が賞味されるようになり、特にみそ漬けの
「香の物」が味覚を刺激し、嗅覚の疲れを癒すことから、盛んに食されたようです。

(5)江戸時代
 野菜の漬け物も多種になり、単に野菜の貯蔵保存の目的だけでなく、食物としての風味も考慮される
ようになります。全国から商人が江戸に集まり、漬け物の調味料の工夫や「当座漬け」「一夜漬け」などの
漬け方も始めました。京都大坂では、「香の物屋」なる漬け物店までできました。
 元禄年間から米糠と塩を合わせた「漬け床」を用いる「ぬか味噌漬け」が出始め、これは連続して
使えるので、広く一般庶民にも漬け物が行き渡りました。「たくあん漬け」もこの頃から出てきています。
 江戸中期には、江戸で漬け物市が開かれるようになり、現在の日本橋小伝馬町恵比寿神社の
「べったら(大根の浅漬け)市」に伝承されていると言います。
 19世紀前半(1836)には、江戸漬け物問屋主人著「四季漬け物塩嘉言」(「漬け物早指南」)なる
漬け物専門書が出され、その内容は「沢庵漬け」以下64種の漬け方が著述されていて、現在でも通用
するとのこと。

(6)明治時代
 東京近郊の農家では「たくあん漬け」「奈良漬け」が重要な産業にまで成り、その後、漬け物製造業へと
発展していくことになります。
 日本は「漬け物天国」と言われるほどに、漬け物の種類が多く、各地方特色ある名産品が多い。特に
京都の漬け物は、「千枚漬け」「酸茎(すぐき)」「しば漬け」「菜の花漬け」「壬生菜漬け」
「日野菜漬け」と多彩です。
 日本では、野菜などの植物性材料が主で、漬け物が米飯にあうのと、冬季の保存性の点から
普及したものと考えられています。

<萬葉集の漬け物>

 万葉集・巻16には漬け物に関係する歌が二、三首見られます。

(その1)3829番歌 「醤酢(ひしほす)に 蒜(ひる)搗(つ)き合(か)てて 鯛願ふ 
             吾にな見せそ 水葱(なぎ)の羮(あつもの)」
           (出典:澤潟久孝「万葉集注釈」巻十六中央公論社(1966年6月)ほか)
 (注)醤(ひしお):小麦と大豆を煎って麹をつくり、それに塩水を加えてつくる。今の醤油の諸味の
           ようなもの。また、肉を塩麹酒で漬けたもの。肉の塩辛、ししびしお。
    酢(す):米酢と酒酢があった。8世紀半、米価の3倍もする高価な調味料であったとされる。
    蒜(ひる) :らっきょう、にんにくなど、ゆり科食用多年草の総称。辛くて強い匂いがする。
                       今の野びる。
    水葱(なぎ):みずあおい。浅い水辺に自生する水草。葉柄を食用にした。青菜の三分の一の
                        低廉蔬菜類。  
 (口語訳)野びる(にんにく)を搗き砕いて醤と酢とを混ぜ合わせたものにあえて、鯛を欲しいと
       願っている私の目の届くところには現れるな、水葱の吸い物よ(まずいので、見たくもない)。

(その2)3886番歌 「・・・・難波の小江の 初垂りを 辛く垂り来て 陶人の作れる瓶を 
               今日行きて明日取り持ち来、 わが目らに 塩塗り給ひ・・・・」
 (注)初垂り:はじめの濃い塩
 (補足説明)この乞食者(ほかいひと)の歌とは、蟹に代わってその痛みを述べた歌という。蟹がニレの
                  粉と塩を塗られて干物にされる「蟹を材料にした「にらぎ」のことで、現在でも
        佐賀県の「がん漬け」のようなものを読んだ歌と解されている。
        「延喜式」では、塩と共にニレの樹皮粉末を用いた漬け物で、青菜、蕪(かぶ)、
        韮(にら)、芹(せり)、蓼(たで)、筍(たけのこ)などを漬けていたことが
        記されている。
 

<漬け物の漢字「酉」>

 「酉」の漢字は、(1)とり、の語義以外に本来、(2)さかつぼ、酒をいれるたる、の意味が
この漢字本来の象形語義とされます。「酉」を扁とする漢字はおおよそ63字(諸橋徹次著
「新漢和辞典」大修館(2002年11月))挙げられていますが、大半が「酒」に関係した語義を
有する漢字です。それ以外で「漬け物」に関係が深いと思われる漢字を抜き出しますと、
次のようになります。(カッコは引用辞書の語義説明)

 酢 (酸味のある調味料) 酪 (果汁からとった飲料) 酸 (酸っぱい味の液体)
 扁「酉」と旁「奄」 (エン)しおつけ、野菜の塩漬け、つけな、魚や肉の塩漬け
 扁「酉」と旁「林」 (ラン)桃の塩漬け、渋柿のしぶをぬいたもの。樽柿、味醂。
 扁「酉」と旁「沈」の旁の部分に「皿」を重ねた漢字 (タン)塩から、肉などを刻み塩に漬けたもの。
 醢(カイ)塩から、ししびしお。肉を刻んで、塩や酒などに漬けたもの。
 醤(ショウ)しおから、ししびしお。ひしおみそ。麦米豆などを発酵させて塩を混ぜた食品。味噌の類。
 醯(ケイ)酢、酢漬け、かゆに酒を混ぜてはっこうさせたもの。 
 扁「酉」と旁「厳」 (ゲン)酢、さけ。

<漬け物の神様>

 名古屋市の西隣、愛知県海部郡甚目寺町に日本で唯一の漬け物神社「萱津神社」があります。
 
(1)所在地 愛知県海部郡甚目寺町大字上萱津字車屋19番地内 1800坪(下記地図参照方)
        (名鉄津島線甚目寺駅下車東へ徒歩20分法界門橋袂・五條川右岸)
  御祭神  鹿屋野比売神
        (太古民族が沃野を求め、土地を開拓した頃、農耕の神として祭祀されたもので、その後
         諸病免除神、縁結び神、さらに本邦唯一の漬物祖神となっている)

(左)名古屋市西部周辺の地図(右)甚目寺町周辺の地図

萱津神社(左)参道正面の鳥居(右)香物殿

萱津の惣図 尾張八景 萱津夜雨(手前・五條川、右端上萱津村、左端下萱津村の全景を描く)
(2)萱津神社の由来と漬け物の起源(「漬け物祖神・ゑんむすびの神」萱津神社資料より)
   当社は、その昔、草ノ社(かやのやしろ)または、種の社(くさのやしろ)といわれ、和歌で
       知られた「阿波手の杜」(あわでのもり)(参考メモ・その1参照)に鎮座する社として祀られて
       いたもの。
   その後、土地の人々が神前に瓜、茄子、大根などの野菜をお供えしました。当地は、昔、海浜で
       あったので、海から摂れる塩とこれらの野菜もお供えしたところ、ほどよい塩漬けになり、人々は
       神からの賜物と頂き、万病を治すお守りとしても、人々に重宝がられました。漬け物の始まりです。
   景行天皇御子日本武尊御東征の道すがら、当社を参拝し、村人が献上した漬け物を
   「藪二神物」(参考メモ・その2参照)とめづらしがられたという。
   それ以来、漬け物は広く知れ渡り、のちの「香の物」になったとのこと。

 (参考メモ・その1)「阿波手の杜」(あわでのもり)
   (イ) 日本武尊が東征の折、伊吹山付近で豪族と戦いましたが、致命傷を負って、再起出来ない
           と分かると、伊勢神宮にいる妻の宮簀姫(みやづひめ)に伝えの使者を立てました。しかし、
           二人はすれ違いで、会うことが出来ないままになり、尊は、伊勢への出立に先立ち、
          「後世、再びこのような「あわで」になることのないように」と、雌雄二本の榊を植樹された
            ところ、榊は地上二メートルの所で連理の枝をだし、萱津神社のご神木になったのです。

       (ロ)  他の伝承としては、宝亀十一年(780)奥州(信夫の里)の夫婦(夫恩雄、妻藤姫)が
           京に住む父を訪ねて萱津の宿に泊まりましたが、妻藤姫は、次の歌を残して死に、父との
           京での再会が叶わなかったことから、「あはでの森」と称されたという。
              「わするなよわが身消えなば後の世のくらきしるへに誰をたのまん」
      またこの森の東に藤姫の霊を招いた跡とされる「反魂香塚」(はんごうこうつか)が参考資料
          (「尾張志」など)に記されています。
                       (引用資料:日本歴史地名大系23「愛知県の地名」平凡社(1990年12月))

   (ハ) 又の資料(「尾張名所図会巻之七」)には、「反魂香塚」の由来を次のように説明して
           います。
      「光仁天皇の天応元年(781)、河内権守紀是広が子、七歳にて父を尋ね、東国に下らんとて、
            この所まで来り、煩い失せけるを、父是広、出羽より登るとて、ここに来合わせ、我が子の
            死せしをきき、智光上人を頼みて、反魂香を焚き、しばしの冥界をとげし跡、塚となり今も
            残れり。・・・」          (以上は、名古屋・七ツ寺の伝承という)
                         
    この伝承から、社叢が「阿波手の杜」(あわでのもり)として、歌枕となり、平安期より紫式部
        ほかの著名歌人が歌を残しているのです。
      「かきたえて人も梢のなげきこそはてはあはでの森となりけれ」(新千載集・紫式部)
      「かた糸のあだの玉の緒よりかけてあはでの杜の露きえぬとや」
                                                            (建保三年内裏名所百首・藤原定家)
      「名にしおはば阿波手の杜の呼子鳥うきはためしの夜半の一声」(同・俊成卿女)
      「ただ染めよ時雨も露も置く霜もあはでのもりの秋のくれがた」(同・宮内卿家隆)

    また、「あはで」の背景として次のような挿話も、相模の歌の詞書きになっています。
     「なげきのみしげく成り行くわが身かな君にあはでの杜にやあるらん」(色葉集・相模)
    康平三年(1060)三月十九日、高倉の一宮にて、国所の名をあはせ給ひけるに、相模が詠める
    歌なり。あはでの杜は尾張の国にあり。昔妻夫をみむとて、尋ね行きけるに、彼の森に行き尽きて、
    あひ見ずして死ににけり。これによりてあはでの森とは名つけけり。さてその国ををはりといふは、
        終(をはり)と書きてけるを、尾張とは注すなり。

    以上「あはでのもり」の伝承に、三種の挿話を引用しましたが、いずれにしても、人が思う人に
       会えなかった事に由来しての「会わで」すなわち「会えないで」の言葉を振り当てた話と思われます。

    因みに、後年の江戸時代には、滝沢馬琴もこの杜のことを記しているようです。

(左)「阿波手の杜・藪香物の図」(尾張名所図絵・巻七より)(右)現在のご神木
 (参考メモ・その2)「藪二神物」(やぶにこうのもの)

(1)ことわざ「藪に香の物」の由来について
    漬け物の神様「萱津神社」のあたりには、昔からの歌枕「尾張の阿波手の森」があり、そこに
       大きな「かめ」が埋まっており、ここを往来する商人たちは、熱田神宮へのお供え物として瓜、
       茄子、あるいは塩をその「かめ」に投げ入れる習慣があったという。瓜茄子商人が供物せずに
       通ろうとすると荷物が重くなって動けなくなったという。そのため、瓶の中では、塩加減のいい
       漬け物ができ、よって二月の初午その他に熱田神宮の神膳に供えたという。こうして当地が
       「香の物」の発祥地となったと。
    
    おなじ様な伝承を別の資料(林英夫編「日本名所風俗図会6/東海の巻」角川書店
       (昭和59年10月))に次のように名所案内されています。
   「むかし萱津の里に市ありし時、近里の農夫、瓜・なすび・大根の類の初めなりを、熱田宮へ
      奉らんとせしかども、道遠ければ、阿波手の森の竹林の中に瓶を置き(今もなほその旧姿を存せり)
        (引用資料例参照方)、
    あらゆる菜蔬(さいそ)を諸人投げ入れ、塩をも思ひ思ひに撮(つま)み入れなどせしが、自ら
       混和して、程よき塩漬けとなりしを、二月・十一月・十二月、彼の社へ奉献せしなり。これを
       藪の香の物と名付け、名産とす。・・・・」
    (引用資料例)参考として、紹巴(里村)は、「富士見道紀」に次のように書き残しています。
      「森の東に反魂香焼跡、また森下に社あり。藪の香の物入り瓶あり。
            野分にやあはでの森の初もみぢ(木扁に色の旁)」

   因みに、江戸期(寛文十一年・1671)の俳楷書に、清水春流著「藪香物」という題名ありという。
                        (引用資料:平凡社「大辞典」24より)

「竹藪に置かれた漬け込みの瓶」(東海道名所図絵より)
(2)ことわざ「藪に功の者」の由来について
    この諺は、”藪医者の中にも巧者がいる”ということで、言い換えれば「大したことはないと
       思っていた者の中に、案外使える者が混じっていること”ということになります。
    また「野夫に剛の者」という言い方でやはり、”田舎者の中にも豪傑がいる”という譬えに
       使われるという。この譬えの出典ははっきりしていて、諸葛孔明が司馬仲達に「あにしらんや
       野夫に功者有るなり」(三国志)と言ったことに由来しているという。
    なおこの参考資料では、「阿波手の森の竹林の漬け物」に関しては、次のように言及しています。
    「熱田神社に神供として供える香の物を名古屋市の西郊にある阿波手の森という所の
           竹林の中で漬けるが、藪の中の桶に、茄子・瓜・大根などを入れておくと、自然に良く
           漬かるという言い伝えがあって、それから生じたことわざというが、諺が前にあっての
           付会であろう。・・・」
      (引用資料:鈴木棠三(とうぞう)著「新編故事ことわざ辞典」創拓社(1992年8月)

(3)特殊神事「香の物祭」(漬け込み神事)と熱田神宮への奉献
  毎年8月21日に漬け物祭礼が行われ、各地から漬け物業者(近年組織された「漬け物祖神萱津
   神社奉賛会」会員2000人)が集まり、漬け物や大根などの野菜が奉納され、本殿での祭礼の後、
 「香の物殿」に供えられた 瓶に野菜を漬け込む儀式が神官や参拝者によって進められます。
  現在この神事は、昭和60年に町無形民族文化財に指定されています。
  また、8月21日は、「漬け物の日」だそうです。
                                             (全日本漬物協同組合連合会事務局のホームページより)

  日本武尊が熱田神宮に鎮座された後、当地の人々は縁の深い「香の物」をお供えしたという。以来
 恒例の神事となり、二千年近くに渡って、熱田神宮の元旦祭ほかの祭礼には特殊神饌として奉献され
 ているとのこと。  
  室町期には、国守萱津頼益が神田を寄進し、江戸期藩主徳川義直は香の物領を献進し、
  皇室へは、度々「香の物」が献上されています。近世、大正天皇、昭和天皇ご即位のときも
  献上されたという。

<一口メモ・その1ー「調味料・さしすせそ」>

 調味料としての「さしすせそ」とは、さ(砂糖)し(塩)す(酢)せ(醤油)そ(味噌)で、味付けも
この順番でするのが料理の基本とされます。それも料理学的に理屈があり、砂糖は浸透するのが
遅いので、早く入れて味をしみ込ませること、加えて他の調味料の浸透を促します。塩は材料の水分を
外へ出す作用があり、早く入れすぎると、材料が硬くなってしまうのです。酢、醤油、味噌を最後に
入れるのは、素材の香りを逃がさないためだそうです。味付けの最後を締めるか、数回に分けて入れます。
各調味料の要点は、次のようになります。
調味料効用種類備考
砂糖素材を柔らかくする。
材料に甘みをつける。
照りを出す。
臭みをとる。
酸化、腐敗を防ぐ。
(1)上白糖(料理に使われる砂糖。精製度が高く、水によくとける。すき焼きにもつかう。)
(2)グラニュー糖(高純度の砂糖。淡泊な味でお菓子につかわれる)
(3)黒砂糖(さとうきびの絞り汁を煮詰めた黒褐色砂糖。濃厚で甘みが強い。かりんとう菓子にも使う。)
(4)三温糖(濃厚でこくのある砂糖。薄い茶色でミネラルを含む。煮物や味噌との相性がある。)
(5)ざらめ糖(結晶粒が大きく、糖度100%高純度の砂糖。無色白ざらは、お菓子に、茶褐色中ざらは煮物に使う。)
砂糖は水分が蒸発すると、固まる。黄ばみの原因は、アミノ酸と糖が長期間の保存で反応するため。
ミネラル補給。
余分な水分をとり、旨みを凝縮させる。
臭みをとる。
(1)原塩(天日製塩の塩。塩化マグネシウム、沃素などのミネラルが多く、柔らかい甘みがある。 産地によって辛さが違う。)
(2)精製塩(原塩を精製し塩化マグネシウムを除いた塩。純度が高く、塩辛い。さらさらしていて水に溶けやすく、 和え物や加熱しない料理に適する。)
(3)荒製塩(天然塩を再溶解して塵を取り除き、再結晶させた塩。にがりが多く、柔らかい甘みと香りがある。魚介類の 下ごしらえに向く。)
(4)食卓塩(精製塩をさらに精製した塩。味を調整する。)
殺菌効果。
灰汁(あく)を取る。
食酢は、醸造酢と合成酢になり、醸造酢は次の種類がある。 (種類については後述の酢の調味料種類のメモ書き参照方)
(1)穀物酢小麦、トウモロコシ、米、酒粕など、穀類を使用したもの。さっぱりした味なので、魚の臭みを取ったり、 アク抜きをする。)
(2)米酢(まろやかでこくがあり、すし飯などに合う。)
(3)純米酢(米だけの原料で作った酢。酸味がまろやかで、芳醇な香りがある。料理や飲用にもなる。)
(4)玄米酢(精白しない玄米からつくられた酢。独特な風味がある。赤褐色で、黒酢も同類。)
(5)果実酢(柚子、かぼす、すだちなどの柑橘系果汁を絞った酢と林檎柿などを発酵させた酢がある。 日本では、鍋物、酢の物、やき魚などに、フランス料理では、欠かせない。)
(6)林檎酢(林檎を発酵させた酢。呑みやすいが水で割って薄めて飲んだ方がよい。)
(7)ブドウ酢(ワインを発酵させた酢。白ブドウ酢(白ワインビネガー)、赤ブドウ酢(赤ワインビネガー)あり。)
醤油食欲を高め、消化を助ける。
殺菌効果。
(1)濃い口醤油(大豆と小麦がほぼ等量、塩分は17%前後。煮物、和え物、刺身醤油などに合う。
(2)薄口醤油(濃口醤油より色が薄く、料理素材の本来の色を出す。お吸い物、若竹煮など、に使う。 塩分は18%ぐらいだが、濃い口醤油より高い。)
(3)白醤油(薄口醤油よりさらに薄い。上品なだし汁や茶碗蒸し等に使う。)
醤油の旨み成分であるアミノ酸と糖は空気に触れると、化学反応を起こし、黒く成ったり、香りがなくなったりする。 冷蔵庫で保管すること。)
味噌体内の酸化防止。
癌の予防、疲労回復
腸内の腐敗菌や有害物を体外に送り出す。
(1)まめ味噌(大豆を原料にした味噌。豆麹と塩だけで米や麦を使っていない。長時間かけて熟成され、 濃い色をしている。みそ汁はじめ、みそ田楽、みそ煮込みうどん、みそかつ、みそおでんなどに使われ、八丁味噌とも 言われる。)
(2)米味噌(日本で8割を占める味噌。米麹と塩でつくられる。白味噌、江戸甘味噌、信州味噌、赤出し味噌など 種類も多く、味も麹の糖分によって甘口、辛口がある。)
(3)麦味噌(麦麹と塩でつくられた味噌で、昔は農家の自家用でつくられていたもの。現在は西日本でよく見られる。 淡色系は甘口で、赤系は辛口の物が多い。別名「田舎味噌」

<一口メモ・その2ー「酢」のあれこれ>

 万葉集の歌にも読まれた「漬け物」の漬け床のうち、「酢」についてのインターネット情報から
一口メモを添付します。
 
<酢の起源>
 酢は酒と並んで古くから人間生活には欠かせないもので、紀元前五千年ころには、バビロニア人は
酢をすでに作っていたとされています。文字による記録では旧約聖書で、今から三千年まえすでに
イスラエルに存在したようです。
 その後新約聖書やギリシャの哲学者ピポクラテス、歴史家ヘロドトスの著書によって明らかになって
きました。日本へは応神天皇(360〜404年)の頃、中国から渡来しました。奈良時代の万葉集にある
ことは前述の通りです。

<酢の製造方法>
 米酢の製造手順としては、
 (1)酒精発酵 お米を蒸し煮し、米麹と水を加えると麹菌の働きで、澱粉が分解され、甘酒のような
       糖化もろみができます。それに「酒母(糖をアルコールに変える微生物・酵母)を加え酒にします。
 (2)出来た酒と「種酢」(発酵完了の酢で、食酢菌が含まれる)ヲ混ぜて、加温して、発酵槽にいれて
      「食酢菌膜」を植え付け、種酢のなかの食酢菌と菌膜の働きで、約2週間で酢が出来ます。
 (3)出来上がった酢を1〜2カ月熟成させて、濾過し、瞬間殺菌して製品化されます。

 因みに、日本の酢製造会社は、
      タマノイ酢  1907(明治40年) 大阪
      ミツカン酢  1804(文化元年) 名古屋・半田
      マルカン酢 1649(慶安二年)  神戸
      ヨコイ醸造  1937(昭和12年) 東京 など

<酢の調味料系>
 「調味料辞典」による各種調味料の種類を見ますと、次のように「酢系統の調味料」が大変多いことが
分かります。
(1)調味料系統の分類
  (その1)調味料「さしすせそ」の種類
      (さ)砂糖35種(し)塩25種(す)酢50種(せ)醤油42種(そ)味噌47種
  (その2)その他の調味料の種類
      (い)酒・25種 (ろ)油・57種(は)ソース・23種(に)だし・24種 
      (ほ)香辛料・53種(へ)ハーブ・28種(と)西洋ソース・28種(ち)その他・20種

(2)酢系調味料各種
      穀物酢、米酢、さとうきび酢、合わせ酢、二杯酢、三杯酢、うま酢、加減酢、
      ワインベネガー、赤ワインベネガー、白ワインベネガー、甘酢、梅酢、白梅酢、
      赤梅酢、白酢、赤酢、黒酢、糟酢、パルサミコ酢、鎮江酢、ポン酢、土佐酢、
      吉野酢、スパイシーベネガー、シャンパンベネガー、フルーツ酢、ブルーベリーベネガー
      アップルベネガー、シェリーベネガー、いちじく酢、ごま酢、すだち酢、すし酢、割り酢、
      八方酢、ねぎ味噌酢、生姜酢、海苔酢、梅肉酢、みぞれ酢、みどり酢、木の芽酢、
      肝酢、落花生酢、蓼酢

ちなみにこれらの主な酢の酸度(各種有機酸の酸味成分の割合)を分類しますと、
  分類      種類     品名             酸度(%)
  醸造酢      穀物酢   穀物酢・米酢          4.2
          果実酢   林檎酢・ぶどう酢・果実酢       4.5
          醸造酢   醸造酢              4.0
  合成酢      合成酢   合成酢              4.0
 

<酢の効用>
 酢は健康によいとされその機能性としては、糖尿病予防、肥満防止効果、消化促進効果、疲労回復
効果、血圧上昇防止効果、老化防止効果、抗腫瘍効果など、良いことずくめです。具体的には、
つぎの解説です。
 
(1)血液をサラサラにする効果あり。 
   酢には酸性に傾いた血液を弱アルカリ性に改善する血液浄化作用があります。健康的な体の
       状態は血液が弱アルカリ性に保たれている状態です。現代人の多くはストレスや不規則な生活など
       で体が酸性に近づいています。酸性気味の血液は汚れた状態でさまざまな病気を引き起こします。
   酢の効用とはこうした血液を浄化する作用で、酢の力で血液は酸性から弱アルカリ性へと改善して
       いきます。

(2)クエン酸サイクルについて 
   酢の成分の有機酸にはクエン酸というものが含まれていて、酢を摂取していると、このクエン酸に
      よる「クエン酸サイクル」がスムーズにまわります。通常、食物中に含まれているブドウ糖は、
      細胞の中で燃やされエネルギーを作り出しますが、その時に完全に燃焼されなかった燃えかすと
      いうのが発生します。そしてこれが酸性物質として体内に残ると体が酸性化して疲れやすくなったり、
      疲労が残りやすくなるのです。「クエン酸サイクル」とはこの酸性物質を減らす燃焼循環で、
      このサイクルがスムーズであると、体が理想的なアルカリ性に近づきます。

(3)酢の効用まとめ 
   (イ)筋肉内の乳酸を分解し、やわらかくする→肩こりや眼精疲労の緩和
   (ロ)悪玉コレステロールを分解し、余剰の栄養分が脂肪になるのを防ぐ→ダイエット効果
   (ハ)腸の働きをよくし、消化を助ける→便秘解消
   (ニ)殺菌力があり、病原菌を殺す→防腐・抗菌作用 

    ************* <暮らしに役立つ酢の活用> ************
◇タバコのヤニをとる
  ・灰皿についたタバコのヤニは、お酢をそのままスポンジにつけて拭くか、しばらくお酢に漬けて
    おくととれます。
◇畳の変色を防止する
   ・畳を洗剤で拭いた後に、バケツ1杯の水(約5L)にカップ1/4のお酢(50ml) を入れたもので
      拭きます。洗剤のアルカリが中和され畳の黄変を防ぐことが出来ます。
◇まな板(プラスチック)の洗浄、殺菌
   ・まな板を洗剤で洗って、水洗い後熱湯をかけます。乾いたふきんをかぶせて、お酢1/4カップ
      食塩大さじ1/2 水3/4カップの酢水をたっぷりかけ、1時間以上置いた後水洗いします。
◇スポンジの洗浄・殺菌
   ・スポンジを洗剤で洗って水洗いします。お酢大さじ2 食塩大さじ1 お湯1カップを45℃以上に
      温め、ボールの中へ水気を切ったスポンジを浸し、軽くもんでスポンジに浸透させ、15分以上
      置いた後、しぼって使用します。
◇魚料理に使った鍋のニオイとりに
  ・魚料理に使った鍋に、100倍にうすめた酢水を入れて10分位煮立てます。洗っても取れ
   にくかったニオイが取れます。
◇コーヒーカップのアクを取る
   ・お酢をそのままスポンジに漬けて、コーヒーカップの汚れをこすると、アクもきれいにとれます。
◇魔法ビンのフレークス防止に
  ・魔法ビンの中にお酢を2〜3滴たらすと、フレークス(水中に浮遊するキラキラとした薄片)は
  発生しません。又フレークスが発生した時は、熱湯にお湯を1割加えて洗うと取れます。
◇野菜のアク取りに
  ・ごぼうやレンコン等の野菜類のアクで黒ずんだ鍋に、2倍にうすめた酢水を入れ15分間位
  煮立てると、きれいになります。但し 焦げ付いて黒くなった鍋には効果はありません。 
      **************************************

平成18年1月15日   *** 編集責任・奈華仁志 ***


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