平成社会の探索


ー第85回知恵の会資料ー平成21年5月10日ー

<「知恵の会」への「知恵袋」>


(その30)課題「かみ(紙)」
「日本の紙芸術ー折り紙」
<目       次>

1.紙の効用 2.「秘伝千羽鶴折形」 3.魯縞庵義道 4.「千羽鶴」の世界
<一  口  メ  モ>

(その1)紙の活用あれこれ (その2)「折紙」の百科情報 (その3)「折紙」関係団体一覧
 紙が今から大凡二千年前に中国で発明されてから、人々は紙をいろいろに活用してきました。
紙は現代社会においては、今や無くてはならないものになりました。日本人にとっても中国から
7世紀初めに伝来してからほぼ1300年。その間、いろいろに工夫が重ねられ、日本独自の
紙世界も展開してきました。
 外国から観れば、日本は「紙と木の文化を持つ社会」と言われている如く、日本社会に於ける紙の
活用は多岐に亘っています。中でも最も日本的と思われる事物として、「日本の紙芸術の三点セット
ー御幣・熨斗・折紙ー」を選定してみました。
 以下に、折り紙に焦点を当ててみます。

<1.紙の効用>

 私たちの身の回りにあるいろいろな紙の分類をその機能別に分類してみますと、次のような多様な
機能を確認することが出来そうです。(一口メモ・その1参照方)

  紙の分類(その1)紙物品別分類(イ)文字や絵画を書き記し、記録として残す。
                (ロ)有価証券とする。 
                (ハ)神事や仏事の用具あるいは遊具とする。
                (ニ)容器あるいは構造物の部材とする。
 紙の分類(その2)紙加工別分類(イ)折り曲げる。
                (ロ)載せる。
                (ハ)拭く。
                (ニ)包む。

 これらの中で、日本人らしい紙利用の最たるものは、「折り紙」ではないでしょうか。日本人は
紙を芸術的に取り扱い、その手先の器用さと相俟って、日本独特の「紙文化」へと構築してきました。
日本文化の代表物品「きもの」が、もとの単なる一枚の布切れに<おろしなおす>ことが
出来て、再び着物に<仕立て直し>できるので、生地がいろいろにリサイクルできる。
それと同様に、「折り紙」も、もとは一枚の紙切れで、そこから立体像に<折りあげ>出来、
いろいろに<折り直し>できる点が素晴らしい発想である。
 折り紙の原点は、何時頃の何からと明確に規定できていないようですが、紙を手に出来た古代の
日本人の日常生活の中から、自然と生まれてきたのではないかと思います。

  参考文献によりますと
 「日本人は特に白色に神秘的な感情を抱く」ことから「神事を源とした切り紙細工」となり、
「紙による造形は古代の人々に豊かなイメージを起こさせ、・・・紙の御幣(ごへい)や紙垂(しで)
が紙の造形の原点」とみられて、それらが生活環境での応用として「熨斗(のし)」になり、さらには
江戸時代に入ってから、芸術的な「折り紙」に発展していったと思われます。
 (出典:町田誠之「紙と日本文化」日本放送出版協会(平成元年11月))

<2.「秘伝千羽鶴折形」>

 「秘傳千羽鶴折形(ひでんせんばづるおりかた)」
  (縦15.5cm、横11cmで、ほぼ現代の文庫本の寸法)
 1797年(寛政9年)京都・吉野屋為八初版発行。折り紙に関する最古の出版物。
 平成三年五月(1991.5)日本折紙協会が複製本を作成した。

 「千羽鶴」とは、<連鶴>ということで、49種目紹介。(一口メモ・その4参照方)
   (原本の挿絵に50番目(拾餌に類似)と51番目の作品(釣りふねに類似)を紹介)
   切り込みを入れた一枚の紙から、最高97羽まで連続した鶴が折れることを示しています。
   まさに驚異の折り紙芸術というべきでしょう。
   

 連鶴作者:伊勢国桑名の長円寺11世住職・義道一円(次項参照方)
 編著者:秋里籬島、連鶴作者を「露菊」として記し、自身は判子「籬島」を押印。
 絵師:竹原春泉斎

  「秘伝千羽鶴折形」は、編著者は「東海道名所図会」などで著名な秋里籬島(あきさとりとう)、
   絵師竹原春泉斎と共同製作になっている。木版一色刷、現代の文庫本と同サイズ和綴本。
  現存する世界で最も古い遊戯折り紙の本を著したことになる。著作から210数年経ち、
  郷里の桑名市では、「桑名の千羽鶴」として無形文化財に指定している。

  各折形に和名銘とその銘にちなんだ恋の狂歌が添書きあり。作品の製作手順として、
   紙の切り込み入れが示されている。(江戸時代流行した紋切り遊びの手法)

 1957年9月吉澤章が国際折紙研究会機関紙「O・T通信」で発表。更に『週刊朝日』書評欄で紹介。
 インターネット上で、全ページが紹介されている。
   (http://www.origami.gr.jp/Archives/Model/Senbazuru/)

 「千羽鶴折形」で示された驚異の折紙作品は桑名市の無形文化財に指定され、この折紙を愛好する
 会が持たれ、定期的な講習会、公民館講座、生涯教育講座、小学校のクラブ学習など、
 市を揚げての文化活動が展開されています。
  さらに、海外へのホームステイの機会を利用して、海外への折り紙紹介も活発に行っている。


<3.魯縞庵義道>

 義道一円(ぎどういちえん)(1762年・宝暦十二年ー1834年・天保五年)(75歳)
  漢詩の号は魯縞庵(ろこうあん)(「魯」地方で産出する薄い絹織物のこと)

(1)義道(1762-1834)長円寺11世住職、号は「魯縞庵」。
  (イ)執筆活動:彼は歴史的なことに造詣が深く、多くの著書を著す。
     *桑名の地誌『桑府名勝志』(1798年刊)(桑名市立中央図書館蔵)
     *名所旧蹟を紹介した『久波奈名所図会』(1802年刊)
     *『縞庵随筆』は、それらの基礎資料(桑名市博物館蔵) 
  (ロ)俳句を詠む風流人で、 当時の各地の文化人との知遇を得て、交流も広く、深い。
     *桑名藩儒学者広瀬蒙斎(もうさい)(「折鶴記」の著書あり)
     *桑名藩儒者片山垣斎(こうさい)(漢詩を残す)
     *『東海道名所図会』の編著者秋里籬島(りとう)
     * 大坂・本草学者蒹葭堂(けんかどう)木村巽斎など
  (ハ)僧侶としての務め
  (ニ)趣味としての「連鶴」の考案 
     *「折紙にした鶴の姿態百品五百羽」を書き留めた 『素雲鶴(そうんかく)』を著す。
       18年かかって完成させた労作だが、現存せず。
     *「百品五百羽の中から選んだと思われる49種類の折形」を紹介した『千羽鶴折形』
       寛政9年(1797)刊行。遊び折紙の書物として世界最古となる。この本によって
       「桑名の千羽鶴」が蘇った。

(2)長円寺:現在地・桑名市伝馬町105番地
      (イ)「東海道名所図会」における「長円寺」解説文
      浄土真宗西派、もと真言宗。旧地は城下南江場村の北郷。慶長六年(1601)に
      「慶長町割り」の際に、現地へ移住。
      本尊は阿弥陀仏(作不詳)。中古住職貫道、本願寺蓮如上人に帰依し、改宗。
      明応五年(1496)3月9日、実如上人より方便法身の尊像を免ぜられる。
   (ロ)所在地と現代風建築の本堂正面

   (ハ)境内墓地には大坂相撲力士千田川善太郎(1804没)の墓あり。

(3)「秘伝千羽鶴折形」以外の義道一円の著作集
   (イ)折形関係の関連著作としての「素雲鶴」
      魯縞庵は「千羽鶴折形」本以前に100種の千羽鶴に漢名をつけ『素雲鶴』という本に
      まとめていたらしいが、現存していない。
   (ロ)「縞庵随筆」享和二年頃(桑名市博物館蔵)
            桑名市指定有形文化財(昭和38年12月指定)
      5冊(もと全6冊であったが、第二冊が欠本)24cmx16.9cm
      美濃判和装、紺色表紙、6穴綴じ、義道の自筆稿本で、桑名市に於ける地誌の研究資料を
      丹念に整理したもの。自著「桑府名勝志」「久波奈名勝図会」の資料源となった。
      長円寺より篁園文庫本となり、戦後中川氏から寄贈された市立図書館を経由して、
      市立博物館へ移管された。山内氏より写本「魯縞庵随筆」二冊寄贈されている。
   (ハ)「久波奈名所図会」上巻、中巻、下巻
      義道著 工藤麟渓挿絵 
      久波奈古典籍刊行会編輯で、1977年5月、影印校注本が出版されている。
   (ニ)「桑府名勝志」(桑名市博物館蔵) 
      「縞庵随筆」(享和二年頃)を元に執筆したと考えられる地元地区の地誌。


<4.「千羽鶴」の世界>

 折鶴は当初は遊戯の一種として女子や子供の遊びとして普及していたものが、祈りを籠める
ための折鶴になり、沢山の折鶴をつなげて一つの祈願を籠めるようになり、さらには、一枚の紙に
切り込みを入れてつながった折鶴(連鶴)を工夫するように高度な紙芸術への展開して、伝承されて
きたのでしょう。
  19世紀初頭の錦絵(浮世絵)に連鶴と覚しき連なった鶴が描かれていて、すでの18世紀の
後半には、江戸で連鶴が折られていたことを匂わせます。

 ホームページ情報によりますと、「千羽鶴」に纏わる話として、次のように語られています。
 千羽鶴は病気平癒や長寿の願いを込めて、闘病中の患者に送ることが習慣になってきました。
 その謂われの一つは諺の「鶴は千年、亀は万年」ということも関係しているようです。
 広島市に原爆が投下され、後に白血病で死亡した佐々木禎子の逸話も生まれているのです。
 彼女は生前に病気の回復を祈って折鶴を折り続けたという逸話があり、ドイツ語や英語に訳され
海外の人々にも知れ渡りました。その為千羽鶴は世界平和の象徴と捕らえられ、広島平和記念公園に
供えられるようになりました。

 「千羽鶴の逸話」から思い出すことは、「千人針」であり、「千日回行」などであるわけですが、
ある願い事に対する達成には「千」の繰り返しが必要と考えたものなのでしょうか。
 「石の上にも三年」といいますから、これでも1095日と千日以上を念頭に置いた言い草に
なっていますし、西洋でも「千一夜物語」もその一例かも知れません。

 更に話は飛びますが、先年映画世界で話題になった宮崎駿「千と千尋の神隠し」なるアニメーション
世界の物語りもこの概念の延長なのでしょうか。
 (注)2001年に発表した『千と千尋の神隠し』の興行記録は、観客動員2350万人、興行収入304億円
    日本における映画史上第1位の新記録。海外からの評価も高く、2002年ベルリン国際
    映画祭では39年ぶりに、アニメーションとしては史上初の金熊賞を受賞。

 「千」の数字に掛ける人間の思いは「千金」「千載」「千古」「千歳」「千秋」「千畳」「千乗」
「千尋」「千仞」「千代」「千問」「千門」「千入」「千里」「千慮」などと「百」の数字は
「実現可能な範囲の諸世界」で「数えうる世界」ですが、それがさらに十倍しますと、もはや
「手の届く世界」ではなくなりなり、「祈願の世界」「人力の及ばない数の世界」となり、
さらに「万」となりますと、もはや「途方もない話の世界」ということで、「千軍万馬」「千呼万喚」
「千差万別」「千山万岳」「千山万水」「千思万考」「千紫万紅」「千秋万古」「千秋万歳」
「千状万態」「千乗万騎」「千村万落」などとなります。

<(一口メモ・その1)紙の活用あれこれ>


                 
分類活用区分活用例備考
紙物品・部材分類 記録用材冊子・巻物・手帳・通帳・日記・絵画・書道・水墨画・日本画・カレンダー・新聞拓本は特殊な記録方法。印刷物の取り扱いは中世以降
画材ちぎり絵・継ぎ絵・貼り絵色紙を活用する場合が多い
遊具トランプ・双六・面子・べった・紙飛行機・凧・風船・手まり・紙人形・紙電話「紙電話」の紙は振動膜として特殊な機能を活かされている。
装飾品・日常小物造花・熨斗・唐傘熨斗は熨斗鮑からの発展
有価証券 通貨紙幣現金は「キャッシュカード」に代用される。
船車券切符・乗車券類磁気化され多機能な券になっている。
証文類株券・債券・証書など平成21年より、株券は電子化され、株券用用紙産業は衰退やむなし。
郵便物手紙・葉書・切手電子メールによる「ペーパーレス化」の動きあり。年賀状もその対象か?。
宗教の用具 神事の用具 御幣・ぬさ・紙垂注連縄や木綿紙垂からの変化
仏事の用具 仏教経典類・法事の散華「散華」の類似品に歌舞伎用具の紙蜘蛛など。
容器・構造物部材 建築部材襖・障子日本家屋の代表的部材
透光性部材照明用具行灯・提灯
熱交換膜エアコンなどの熱交換器部材某電器メーカのアイデア製品
微粒子濾過空気清浄機のフィルター
空気ダクトのパッキン部材
某メーカーのカーエアコン
紙加工分類 折る折り紙折形ともいう。江戸時代に多様化したもよう。
たたむ唐傘・提灯・扇子扇子は重要な日本文物
撚る紙縒(こより)冊子の綴じ用具
載せる食器類(紙コップ・紙皿など)「使い捨ての文化」はごく最近の社会風潮
拭くテイッシュ・ペーパーやトイレット・ペーパー昔の人々はどうしていたのか?大変興味ある疑問点。
包む包装用材としての封筒やダンボール箱など緩衝材としても活用されている。

<(一口メモ・その2)「御幣」あれこれ>

  御幣(ごへい)は神道祭祀で用いられる幣帛の一種。
 2本の紙垂を竹または木の幣串に挟んだもの。幣束(へいそく)、幣(ぬさ)。
 紙垂は白い紙で作る。
 御幣の紙垂は白紙や五色の紙、金箔・銀箔も用いられる。
 かつて、神に布帛を奉る時、木に挟んで備えていたが、それが変化したのが今日の御幣。
 元々は神に捧げるものであったが、後に社殿の中に立てて神の依代あるいは神体、あるいは
 祓串として参拝者に対する祓具となった。
 梵天は長い棒や竹の先端に幣束を何本か取付けたもの。 

<(一口メモ・その3)「熨斗」あれこれ>

 熨斗(のし)は慶事の進物や贈答品に添える飾り。黄色い紙を長六角形の色紙で包んだ形状を
している。祝儀袋等の表面に印刷された、簡略化されたものもあり、水引と併用される。
 正式には熨斗鮑(のしあわび)と呼ばれ乾燥させたアワビが用いられ、打鮑(うちあわび)とも。
 (注)熨斗鮑はアワビの肉を薄く削ぎ、干して琥珀色の生乾きとし、竹筒で押して伸ばし、
    更に水洗いと乾燥、押し伸ばしを繰り返すことによって調製したもの。
  現代生活に於ける一例は次のようなもの。

 「のし」は延寿に通じ、アワビは長寿をもたらす食べ物とされたため、古来より縁起物とされ、
神饌として用いられてきた。『肥前国風土記』に熨斗鮑が記されており、平城宮跡の発掘では
安房国よりアワビが献上されたという木簡も出土している。
 中世の武家社会でも武運長久に通じるとされ、陣中見舞などに用いられた。
 (『吾妻鏡』建久3年(1191年)源頼朝の元に年貢として長い鮑(熨斗鮑)が届いた記録あり。)
 正月の鏡餅には大熨斗、束ね熨斗が飾られ、婚礼時の結納品として、束ね熨斗が用いられる。

<(一口メモ・その4)「千羽鶴折形」49種と添え書き狂歌>

 1.妹背山(いもせやま)結びては妹背の山の中に折れる吉野の紙のよしやはなれぬ
 2.野干平(やかんべい)野干平つれて狐の嫁入りかな 時雨もしたり日も照りにけり
 3.拾餌(えひろい)  餌を拾うように恋路の粟畠 人が来るやら 引板(ひた)の音する
 4.楽々波(さざなみ) 唐崎の松は花より朧にて 晴れぬ思ひのこころさざ波
 5.風車(かざぐるま) 一筆の恋風車吹き寄せて かくした文の袖の重たさ 
 6.四つの袖(よつのそで)夜桜やにほひあまりて初夜も過ぎ 四ツの袖から恋風ぞ吹く
 7.早乙女(さおとめ) 花嫁も娘も出でて早乙女やおいどならべて田植えするなん
 8.八ッ橋(やつはし) 紫の野郎帽子の八ッ橋や七十過ぎて振り袖の役
 9。鼎(かなえ)    やすやすと鼎を揚ぐる力あり 恋の重荷をこれに比べて
10.鳴子(なるこ)   秋風は吹けども開かぬ忍び路に 来るを知らする鳴子からから
11.稲妻(いなずま)  稲妻や昨日は東京は西 祇園雀の色に浮かれて
12.呉竹(くれたけ)  今若や乙若連れて呉竹の伏見の里に契る常磐木
13.布晒(ぬのさらし) 顔見せや顔を晒して布晒 人も砧のいつも大入り
14.九万里(くまんり) 九万里に羽をのす鳥の思ひにて 人目の関を越えて忍ばん
15.花見車(はなみくるま)志賀寺の上人さえもその昔花見車の内に恋草
16.昔男(むかしおとこ)業平を昔男といふならば昔女は小町なるべし
17.妙妙(みょうみょう)目くはせてさとらすもありさとりあり 弥陀法華も契る妙妙
18.村雲(むらくも)  忍び路の恋を見付けて群雲の中からバアと月の顔だす
19.葭原雀(よしはらすずめ)暮れを待つ吉原雀仰々し 大夫格子に散茶呼び出し
20.春の曙(はるのあけぼの)居続けに千々万個の玉や一 力みの見えし春の曙
21。蕣(あさがお)   朝顔や釣瓶とられてもらい水ついでの千代と目で知らす暮れ
22.青海波(せいかいは)恋風に帆をあげてゆく玉梓は青海波の上をゆらゆら
23.杜若(かきつばた) 添ひ臥しにはらみし花の杜若 みな紫のゆかり美し
24.熊谷(くまがえ)  軍門にはいって夜ととも熊谷のほろ(母衣)を乱さぬ恋をするかな
25.瓜の蔓(うりのつる)しのぶれどお腹の中に瓜の蔓 ものや有らふと人の問ふまで
26.寄生木(やどりぎ) 夕立につひ宿り木か二世の縁 空焚きならぬ匂ひとどめて
27.花橘(はなたちばな)待ちわびて君をつらしと思ふなり 腹立ち花に夜を明かしつつ
28.荘子(そうじ)   垣間見や戯れている蝶二つ堅い荘子も恋を召さるる
29.芙蓉(ふよう)   楊貴妃は芙蓉の花に似たるとて抱いてねたれば露に濡れつつ
30.横雲(よこぐも)  横雲の棚引く頃に夜這い星 またるる寝屋に蟹の横ばい
31.竜胆車(りんどうぐるま)忍ぶてふ竜胆車くるくると寝屋のあたりを行きつ戻りつ
32.相生(あいおい)  年寄らず若い夫婦でいつまでも金沢山に相生の松
33.比翼(ひよく)   天にあらば比翼のちぎり楽しまん 霞の蒲団雲とりの夜着
34.夢の通い路(ゆめのかよいじ)有明の月もる閨をこそこそと夢の通い路一間越ゆらん
35.鶺鴒(せきれい)  鶺鴒の尾のひこひこを見習ひて大きな國を垂れるほど産む
36.澤潟(おもだか)  初恋はうれしきものとおもわるる面たかだかとよみあぐる文
37.三が一(みつがいち)ぴかぴかと光源氏の顔かたち思ひは三が一の筆なり
38.瓢箪町(ひょうたんまち)金銀や桂馬に乗りて九軒とび瓢箪町へ駒を早める
39.三つ巴(みつどもえ)悋気から輪廻のめぐる三つ巴われを祭らん宇治の橋姫
40.風蘭(ふうらん)  嶋原の戻りは風蘭ふらふらとまだ忘られぬ袖の移り香
41.雛遊び(ひなあそび)見渡せば芸子白人(しらひと)こき混ぜて柳桜の雛あそびなり
42.蟻の塔(ありのとう)恋しさは同じ心にあらざらん 蟻の塔積む文の数々
43.花菱(はなびし)  花菱や桔梗や桐の紋づくし けはひ道具を送る嫁入り荷
44.つく羽根(つくはね)つく羽根の娘もつひに嫁となり恋ぞつもり子持とぞなる
45.巣籠(すごもり)  襟元へ顔をすごすもはずかしやけふ水揚げと祝そめてき
46.迦料頻(かりょうびん)恋風や御簾のひまより 迦料頻五つ重ねのきぬがちらちら
47.蓬莱(ほうらい)  嶋臺(しまだい)は蓬莱山を写しけり尉(じょう)と姥との相惚れぞ良き
48.釣りふね(つりふね)妓王妓女仏も元は凡夫なり 妻恋ふ鹿を尼をつりふね   
49。百鶴(ひゃくかく) 朝比奈の紋を十づつ十寄せて 百人力の鶴の紋なり

<(一口メモ・その5)「折紙」の百科情報>

 折り紙の起源は明確でなく、中国、日本あるいはスペインという考えもあるようです。かなり明確な
推論として、「日本の折り紙」は、他から伝承されたものでなく、独自に発達した芸術という事です。
 19世紀に既に欧州にも独立した折り紙文化があることがわかり、開国された日本の折り紙が西欧に
伝わることによって現在の世界共通の「折り紙文化」に開花していったようです。
 従って日本語の「折り紙」という言葉は世界中に浸透しており、欧米でも「ORIGAMI」が
通用しているのです。

 日本の折り紙は次のように分類されています。
 「遊戯折り紙」:一般に知られている折鶴などの折り紙
         1682年(天和二年)井原西鶴「好色一代男」に「おり居」と言及されている
         のが最古の記録とされる。それから115年後に刊行された魯縞庵義道の
         「秘伝千羽鶴折形」は、世界最古の折紙史料とされる。
 「儀礼折り紙」:熨斗などの礼法折り紙
         1680年(延宝八年)井原西鶴「一昼夜独吟四千句」中に詠まれた
         「おりすえ」の言及が最古の記録とされ、「雄蝶・雌蝶」とは、銚子の口に
         付ける礼法折り紙の原形で、銚子の包みが形式化したものとされる。
         また現在の熨斗も熨斗鮑の包みが形式化したものとされる。
         武家の礼法として小笠原・伊勢・今川各氏族に発展した流儀があることから、
         既に室町時代にその伝統が形を成していたと推測されている。

<(一口メモ・その6)「折紙」関係資料・団体一覧>

「日本折紙協会」(http://www.origami-noa.com/)
         東京都千代田区五番町12・月刊「おりがみ」発行
「日本折紙学会」(http://www.origami.gr.jp/)
         東京都文京区白山1-33-8-216・隔月発行「折り紙探偵団」
「日本紙アカデミー」 
「日本折り紙博物館」石川県加賀市在

「おりがみ会館」東京都文京区湯島1−7−14 ・・・・和紙・手芸教室を開催
「桑名市博物館」三重県桑名市京町37−1・・・桑名の千羽鶴紹介「千羽鶴折形」原本所蔵
「桑名の千羽鶴」大塚由良美著・桑名市教育委員会編集(リバティ書房)(1987年12月刊行)
「つなぎ折り鶴の世界ー秘伝千羽鶴折形」岡村昌夫著(本の泉社)(2002年9月刊行)

「世界折紙展」
「アメリカ折り紙センター」(America Origami Center)
「英国折り紙協会」(British Origami Society)

創作折り紙作品例(ETの折り紙)(大阪府三島郡島本町在住・正木氏の作品例)
『E.T.』(イーティー、E.T. The Extra Terrestrial )の参考メモ
1982年公開アメリカのSF映画で登場する、架空の地球外生命体。
Exra=外の、Terre=地球、strial>stella(星)の者。
製作会社:ユニヴァーサル映画 監督・製作:スティーブン・スピルバーグ。



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平成21年4月30日   *** 編集責任・奈華仁志 ***

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