平成社会の探索


ー第77回知恵の会資料ー平成20年4月27日ー

<「知恵の会」への「知恵袋」>


(その21)課題「たけ(竹)」
ー「竹の創り出す音楽世界」ー

目       次
1.竹材の活用ー機能別の分類
2.邦楽の尺八と蓄音機の竹針
3.参考メモ書き集

<1.竹材の活用>

 竹の品種は全世界で500種以上、日本に240種以上あると言われています。日常生活環境の中でも
比較的身近に存在しており、なおかつ周辺のいろいろの物に有効活用されています。
 竹をいろいろの用途に活用することは、「竹取物語」の昔から、言われていることです。すなわち、
 「いまは昔、竹取の翁といふもの有りけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづの事に使ひけり。」
と言う文章で物語は始まります。紫式部が源氏物語(「竹取の翁」(絵合巻)、「かぐや姫の物語」
(蓬生巻))に、初めて文学作品として言及するだけの価値のある「物語の元祖」というべき作品で、
「竹」を素材として、話を進めていることから、竹が如何に人間の社会に関わっているかいう事を
裏付けることになっています。

 竹を素材とする品物を分類すると、次のようになります。
機能別分類製品例
ポール素材 釣り竿、継ぎ竿、棒高跳び竿、物干し竿、旗竿、竹馬、鯉のぼり竿
踏切遮断機、スキーストック、梯子(新幹線保線工事用)、海苔作り用竹柱
建築材 竹柱、天井、屋根裏、竹小舞(塗り壁素地)、竹筋コンクリート(鉄筋代わり)、
床材、建築足場、民家・茶室の棟飾り、
環境構成材
(エクステリア)
竹塀・竹垣、竹排水溝、竹橋、竹筏、防風囲い、犬矢来、防災竹林
環境構成材
(インテリア)
椅子、竹卓、簾・御簾、衝立、暖簾,フローリング、平板、
車内装材、高級外壁材、窓、バンブー箪笥
繊維利用 衣服(ガラス繊維の代替)、竹繊維の紙(竹バルキー)、竹綱・竹縄、竹織物、
白熱電球フィラメント
食器 箸・菜箸、串、楊枝、小皿、銚子、猪口、柄杓(スプーン)、
巻き寿司用具(鱒寿司など)、竹皮(防水・殺菌包装材、草履)、酒樽輪竹、
笹団子、笹粽(ささちまき)
器物 火吹き竹、キセル筒、樋(雨樋、そうめん流し、温泉湯冷まし路など)、
竹筒(水筒、発酵用具)、竹飯筒、癌封じ御酒器(奈良・大安寺)
竹細工・竹製品 日用品類
(毛筆軸、バレン(版画用真竹皮)、竹ペン、易の筮竹(せいちく)、竹簡、竹帚、
熊手、雨傘、竹帽子、竹笠、扇子、団扇、提灯、篭、箕、笊(ざる)、米櫃、花篭、漆器、
耳かき、孫の手、竹篦(しっぺい))、伸子針(洗い張り用)、竹ガッパ(竹下駄)、
竹皮草履、竹草鞋、雪草鞋、スケート下駄、竹橇、竹編み物・編み板物差し、計算尺、編み物針
伝統的工芸品
(地域:京都・別府・静岡・高山・勝山・都城など)
漁具類(釣り竿、魚籠(びく)、簗(やな)、筌(うけ))、
茶道具類(茶杓、茶筅、花入れ、花器)
装身具(櫛、竹玉など)
遊具類
(水鉄砲、紙玉鉄砲、竹とんぼ、ウグイス笛、竹ひご(模型飛行機梁)、竹馬、凧、笹舟)
竹人形、南京玉簾、スキー・スケート、麻雀牌
武具類 竹刀、弓、矢(ヤダケ)、竹槍、竹ナイフ、竹光、破竹
竹特性活用品 健康茶、脱臭剤、安眠枕、鮮度保持剤、化粧品基材、
足踏み具(青竹踏み)
楽器類
(参考メモ・その2)
尺八(普化尺八)、笙、龍笛、篳篥、能管、篠笛、鳳笛、竹太鼓、竹琴、
ささら(簓)、鹿威し、竹シロフォン、竹パイプオルガン、バンブーオーケストラ(バリ島)、
響き洞、チャッパ、蓄音機用竹針(後述2.項参照)
燃料竹炭(湿度調整、脱臭、鮮度保持作用)
食材・生薬 筍(筍料理(長岡京市・錦水亭)など)、麺麻(支那竹)、パンダの笹食材、家畜飼料
竹葉(ハチク・マダケ葉の解熱・利尿作用)、竹葉青(竹のリキュール)、
竹茹(ハチク・マダケの茎内装の解熱・鎮吐作用)、竹れき(タンチク・ハチク茎の液汁)
鑑賞品 竹盆栽,、竹林亭・公園(参考メモ参照)、人工四角竹、山水画・水墨画材
神事用具 七夕笹、門松飾り、忌み竹・齊竹(地鎮祭神事)、松竹梅(厳寒の三友)、
四君子(竹・梅・蘭・菊)

(左)各種の磨かれた竹(京都市洛西竹林公園・竹の資料館)
(中)各種竹細工品(同・竹の資料館)
(右)竹製の灯籠(長岡京市記念文化会館内に展示されている竹細工品)
(参考メモ・その1)竹関連民俗・民芸分野の文化事項
(1)神事の用具
  七夕祭り、とんどさん、左義長祭り、神事の飾り物各種、斎竹(いみだけ)、ササラ踊り、
  弓神事、流鏑馬、湯立神事、鞍馬寺竹伐り会式(青竹)、恵比寿神社大祭(笹)、
    東大寺二月堂修二会、信州花祭り、戎祭り、竹打ち祭り、竹引き祭り、竹割り祭り、
    お花踊り、尻叩き行事、
(2)神話・伝説・言い伝え(竹取物語・かぐや姫、舌切り雀など)
(3)竹の神社 笹神様(東京神田明神)、山王神社(京都府八田村)、
    竹神様(兵庫県西宮市)、竹神社(三重県伊勢市)  


(参考メモ・その2)竹情報発信機関・施設

(1)「日本竹の博物館」(別府市内):大分県は竹細工製品の生産地、全国各地の
   竹製品1500点を展示。

(2)竹の公園:京都市洛西竹林公園

(左)「竹の資料館」の展示棟と庭園の笹群(中)亀甲竹のモデル竹林(右)外国の竹各種展示品
         富士竹類植物園
         水俣エコロジカル健康公園・竹林圓、森林総合研究所
         大学機関(大阪市立大学理学部付属植物園、
                京都大学農学部上賀茂試験地、
                九州大学農学部演習林、など)
(3)竹関係の団体
         「日本の竹を守る会」(京都岡崎公園内、「京都市伝統産業会館」)
            会長・千宗室、理事長:上田弘一郎 1976年発足、会員6000名、
            海外支部有り。
         「竹文化振興協会」・財団法人竹文化振興財団
         「八幡たけくらぶ」
         「世界竹会議」

<2.邦楽器の尺八と蓄音機の竹針>

**********   尺八に関する音楽情報   ***********
      数年前、某音楽大学公開音楽講座で「尺八」に関する音楽情報を聴取し、   尺八の音楽世界は誠に奥深い物だと知らされた次第です。     参考メモ:「日本で生き延びた尺八(その1)」「同(その2)」

<日本の音 竹の音>

 平成14年10月、大阪音楽大学音楽博物館開館記念 第53回目<ミュージアム・コンサート>鑑賞
 尺八演奏と講演 同大学講師星田都雨山氏による尺八解説及び模範演奏

 1.講話関係
   (1)尺八の流派 都山流について
   (2)尺八の一般知識
   (3)尺八による各種ジャンルの音楽(小学唱歌、歌謡、ポピュラーソングほか)
   (4)演奏技術について(吹鳴物あれこれ)
 2.演奏関係
   (1)本曲「木枯らし」流組 中尾都山作曲
   (2)本曲「石清水」流組 中尾都山作曲
   (3)尺八独奏曲「飛雲」山本邦山作曲  
   (4)尺八独奏曲「茴香(ういきょう)」星田都雨山作曲

 尺八の一般入門知識を短時間で理解できるように解説で、尺八の音楽世界が拡がりました。
 興味ある解説内容の要点は、次の通り。

***************************************

 現在一班に使用されている楽器を分類すると、弦鳴楽器、気鳴楽器、体鳴楽器、膜鳴楽器になり、
気鳴楽器は、さらに、「笛」と名のついたいろいろな構成の楽器があります。
 一例、龍笛、高麗笛、神楽笛、篠笛、明笛、清笛、ビービー笛、さらには、草笛、指笛、
口笛があり、古いところでは、石笛、土笛、チャルメラ、ラッパ、能管、オカリナ、など。
 日本風な楽器としては、尺八、一節切、ひちりき、笙などがあります。
 洋楽では、オーボエ、フルートなどが代表的な楽器です。

 尺八の起源は、唐朝貞観年間(627〜649)呂才なる中国人が長短十二種の縦笛を
制作したと伝えられています。館長が最長で一尺八寸であったので、尺八の語源となった
ようです。
 宋代以降は、各種の縦笛が出てきて、尺八の伝統はなくなったそうです。しかし、日本には、
中国よりもたらされてから伝承され、今日に至っています。

 現存の尺八の分類は、六種(普化尺八、古代尺八、天吹、一節切り尺八、多孔尺八、
オークラウロ)ですが、一般には、普化尺八の代名詞になっています。

 これらの尺八の特徴は、次の通りです。
  管上端切り口前側が歌口となること、
  歌口は管外面を斜めに削り落とし、出来た孤形の鋭い角に息を吹き付けることによって、
   音をだすこと、
  音高の変化は、指孔開閉と息の圧力と角度によって付けること、
  息の変化は、音色の変化を伴うこと

 尺八で演奏される曲は、宗教音楽、芸術音楽、民族音楽、通俗音楽などがありますが、
何れの分野でも本曲(尺八のみの尺八のための音楽)と外曲(他の楽器の曲を尺八音楽に
編曲した物)に分かれ、その範囲は、かっての普化宗の宝亀であった頃とは、比較にならない
ほど、広範囲になっています。         

 *七節の中に五穴(一から四穴まで表、五穴は裏)あり、歌口が管上部に付いている。

 *尺八(一尺八寸)の名前の由来もさることながら、いろいろな4種の長さ(二尺三寸〜
  一尺三寸)の尺八が正規の一式であること。

 *真竹材が正式な素材であるが、簡略に木材の物もある。
  (価格は数万から十数万、高価な物は百万単位のものまで)(木材ものは2万円ほど)
 *江戸時代まで尺八は、法器扱い(普化宗僧侶に限定されていた)で、明治4年から
  一般人も扱えるようになった。(楽器の歴史としては、いまだ100年少し)
 *都山流は、明治29年に大阪枚方在の中尾金蔵氏が創始者で、平成8年で、
  ようやく100年目を迎えた。琴や三味線は、500年以上の歴史を有するのに比して、
  まだ歴史は浅い。
 
 *間近に尺八の模範演奏を聴きますと、尺八の音のすばらしさを体験出来ました。
  息の吹きかけ方、息の勢いによっていろいろな音色と音楽に感情を持たせうることが
  分かります。首のふり方だけでも習得に数年かかるという、年と共に演奏の技術に
  深みが加わるということでしょう。
  簡単に良い演奏が出来ないだけに、技術を磨けば一層音の世界に変化が得られると
  言うことで、腕の磨き甲斐があるというわけです。

<尺八の音世界と日本人>

  尺八が、普化宗の法器からから一般大衆に解放されてから、すでに130年近く経っている
現在でも、一般の日本人には、「尺八」といえば、「虚無僧」、「虚無僧」といえば、時代劇の
映画の世界が連想されます。それほどに尺八の音の世界は、虚無僧に代表される宗教世界の音楽
というイメージを払拭することが出来ません。

 一方箏(琴)、三味線を中心とするいわゆる邦楽の世界は、特に戦後その活動範囲が広がって
きました。演奏される音楽分野と演奏する奏者の世代の拡大がみられ、新たな日本の代表的な音
楽に定着しつつあります。
 さらに最近では、宮廷の音楽であった諸楽器も、若手の奏者の幅広い活動によってその世界を
広げつつあります。

 洋楽に於ける各種の楽器も種類によっては、かなり古い歴史を有する物もありますが、尺八も
その原形が、正倉院の御物として伝承されているように、大変古い楽器の一種です。
 大凡千三百年間、殆ど基本的な構造を変えないで、伝承されてきたわけですから、千三百年前
に人々が聴いていた音の世界を尺八によって我々も体験することが出来るのです。

古代尺八群(正倉院宝物)
 尺八の発祥元の中国では、すでに、尺八の原型が消滅しているそうですから、唯一日本に於け
る尺八のみが、古代の音楽を伝えていることになります。
 竹で出来たこの尺八という楽器は、どうも日本人の感性にあっているのではないでしょうか。
 尺八の音は、どことなく鄙びた感じの音の世界を醸し出します。尺八の音楽を嗜んでいる人に
依りますと、演奏することによって、心が落ち着く、精神統一が出来る、という効果もあるよう
です。
 是非とも、民族の楽器、民俗の音楽として、伝承して行きたいものです。

平成17年6月8日 尺八に関する公開講座 大阪音楽大学 開校90周年記念企画 
 大阪音楽大学セミナー2005 ”古今東西音楽考”ーその20−
 「尺八の音色・ユリについて」
 講師・演奏 三代 星田一山(星田都雨山氏が家門を継いで、師匠名に改名)
 
 1.講座関係・・・ユリの種類
   (1)よこユリ  首を左右に動かして音色に変化を与える。
   (2)たてユリ  音程の変化を聞かせる。(民謡の伴奏に多い)
   (3)息ユリ   息の強弱とスピードの組み合わせで曲に変化を与える。
   (4)回しユリ  首を回しながら音色に変化を与える。
   これらの奏法の違いに、ユリの(スピード、深さ、強弱)の組み合わせて多彩な
   演奏効果を与えるもの。
   ユリによる演奏の音楽的表現としては(優しさ・厳しさ、哀しみ・慟哭、寒さ・暖かさ
   不安、暗さ、余韻)などが、かもしだされるという。

 2.演奏関係・・・ユリの代表例
   (1)「慷月調」(明治36年・1903)
   (2)「石清水」(明治37年・1904)
   (3)「寒月」 (明治44年・1911)
   (4)「木枯らし」
   (5)「峯の月」(大正12年・1923)

 これまで、何気なく、聞いていた尺八の演奏も、このような色々な奏法に区分し、かつ
例題も示していただく解説で、大変解りやすい尺八技法解説になりました。
 簡単な形状の楽器だけに演奏者の個人的技量の深さが深くなり、かつ巾広くなる楽器である
ことがわかります。


<尺八の音の世界の広さ>

  尺八が明治時代以前の明暗寺院30数ヶ寺を中心とした普化宗の法器から発展して、
明治中期(明治四、五年〜明治十四、五年)一般大衆化されてから、大凡130年近く
経っています。現在でも、一般の日本人には、「尺八」といえば、虚無僧に代表される
宗教世界の音楽というイメージと重なっています。

 一方「三曲」のうち、尺八以外の箏(琴)、三味線の邦楽の世界は、一般大衆化がかなり
早くから進行していました。
 近年、宮廷の音楽・雅楽の諸楽器も含めて、これらの楽器で演奏される音楽分野と演奏する
奏者の世代拡大がみられ、新たな日本の代表的な音楽に定着しつつある点に関しては、すでに
前に言及したところです。

 洋楽に於ける各種の楽器も種類によっては、かなり古い歴史を有する物もありますが、
尺八もその原形が、正倉院の御物として伝承されているように、大変古い楽器の一種で、
大凡千三百年間、殆ど基本的な構造を変えないで、伝承されてきたわけです。
 尺八の発祥元の中国では、すでに尺八の原型が消滅し、唯一日本に於ける尺八のみが、
古代の音楽を伝えているので、「日本民族の楽器」となっていることを前回の公開講座の
時に聴講しました。

 竹で出来たこの尺八という楽器は、どことなく鄙びた感じの音の世界を醸し出すので、
どうも日本人の感性にあっているようです。星田先生の解説に依りますと、尺八を演奏する
ことによって、心が落ち着く、精神統一が出来る、精神が安定する、安眠療法にも効果があり
活用されているようです。
 
 今回の尺八特殊奏法を拝聴しますと、「尺八の音の世界の広さと深さ」が確認できました。
 簡単な楽器構造であるだけに、簡単に人に感銘を与える演奏は、難しいものであることも
納得できます。
 解説された色々な「ユリ」を使いますと、一段と尺八音楽の人に訴える力が計り知れない
広さと深さを有していることがわかります。演奏者が尺八という楽器を使って言葉では言い
表せない「人の心の揺れ」を音として外部に引き出しているとも言えましょう。


<「尺八文化」伝承への提言>

 楽器としてこれ程魅力に満ちたものを「日本の伝統的楽器」として、今後もますます
その存在価値を高めるために、次のようなことをあれこれ模索してみました。部分的には
既に確立されているかもしれませんが、列挙しますと、次の通りです。

1.学校教育に於ける音楽講座の開設
 (1)現在義務教育期間に楽器に接する機会は、「リコーダー」の演奏授業のようです。
  その目的と効用は如何なるものか、また採用にはどのような観点から為されたのか、
 確認しておりませんが、リコーダー一辺倒ではなく、尺八もその中に含めてはどうかと
 考えるところです。

 (2)現在国立の音楽大学は、名目上無くなりましたが、東京芸術大学を始めとする公的な
 音楽教育機関で、邦楽部門の音楽講座は存在するでしょうが、民族文化伝承の観点から
 充分な物心両面の支援や保護活動がなされているか、甚だ気になるところです。
  邦楽学科ではなく、「尺八学科」ぐらいに考えたいところです。
  私立の音楽教育機関では、それ以上に熱心に邦楽教育プログラムを開講しているところも
 あるでしょうが、「尺八学科」までに至っているところはないのでは、と推測します。

 (3)フランスのパリ音楽院は、音楽教育機関としては世界最古の歴史を誇っているところ
 で、これまでも、新しい楽器に対して積極的に音楽教育の対象として採り上げている実績が
 あります。19世紀のサキソフォン、20世紀のオンドルなど、めざましい取り組みです。
  ここで、21世紀の企画として、尺八学科設立を考えてみてはいかがと提言します。
  ジュリアード音楽院でも結構ですよ。(極端すぎるでしょうか?)

2.尺八協会と尺八コンクールの開催
 (1)現在非営利団体として尺八を活動の主体に採り上げている団体は、どの程度有る
 のでしょうか。インターネット検索による情報例としては次の通りです。
   
  「尺八の手ほどき」(石倉光山氏):http://home.att.ne.jp/green/kozan/
  「尺八吹奏研究会」(貴志清一氏):http://bmbnt.com/shaku8/
  国際的な活動としては、
  「国際尺八研究館」(     ):http://www.shaku8.com/kenshukan/
  「尺八ステーション」(谷藤紅山):http://www.phoenix-c.or.jp/~watarun/

  現在、尺八の流派は、琴古流、都山流、上田流、竹保流、など様々のようです。
  流派を組むことは、奏法の維持と伝承には適しているかも知れませんが、どうしても
 排他的になり、音楽芸術としての尺八の一般化、あるいは、普及には、最適のシステムか
 どうか、いろいろ課題を含んでいるのでは、と考えます。
  楽界あるいは連盟活動を展開しているのは、都山流系統の次の団体です。
  財団法人・都山流尺八楽会 社団法人・日本尺八連盟
  関係団体として 日本民謡協会などがありますが、尺八を主体に考えて団体活動であるか
 どうかは、要確認です。

 (2)日本音楽コンクールには、洋楽の各種部門の演奏競技はありますが、尺八の部門は
 どうなっているのでしょうか。海外でのヴァイオリンやピアノなどの伝統有る国際コンクール
 への登竜門として、このコンクールの大変熱が入っているようです。加えて、最近
 若いしかも10代の若者の活躍が目覚ましい物があります。であれば、尺八の分野においても
 日本が国際コンクールを主催して、演奏者のレベル向上を図ってはどうかと思うところです。
  日本音楽コンクール・尺八大賞などはいかが。

3.洋楽とのコラボレーションによる尺八名曲選
 (1)戦前、昭和の初めに、箏曲の大家宮城道雄がフランスのヴァイオリニストとの共演で
 「春の海」を発表して、一度に箏曲の名曲になり、現在でもお正月には、毎年あちこちで
 聞かれるところです。このような洋楽器との合奏による尺八の名曲選を期待したいところ
 です。

 (2)日本人作曲家の尺八名作品として、さしずめ、武満徹さんあたりがこの分野に名曲を
 残してくれたらと思うところです。氏の作品には、当然尺八は活用されているのでしょうが。 
  この種の動きに関連していると思われる日本現代音楽協会(林光氏)(国際現代音楽協会
 日本支部)が、尺八を中心とし多音楽作りと演奏のワークショップを2005年度事業と
 して展開しているようです。関連するURLは次の通りです。
       http://www.jscm.net/ed/html
    さらなる活動の拡大と展開を期待したいところです。

************** 蓄音機の竹針 ***************

<蓄音機の歴史>

 1877年(明治10年)エジソンが真鍮製円管の銀箔上に「音をかく(Phonograph)」ことに
成功してから,、1983年(昭和58年)頃から出始めたデジタル録音方式のCD(コンパクトディスク)に
取って代わられるまでの約100年間に次のような蓄音機の技術的変遷がありました。

1.エジソンの蝋管時代:1877(明治10年)〜1887(明治20年)
(1)世界初の蓄音機「フォノグラフ」はエジソンによって1877年12月6日発明された。
  (参考メモ)エジソンの声(「史上初の録音・メリーさんの羊」)
        Mary had a little lumb. Its fleece was white as snow. 
                 And everywhere that Mary went, the lumb was sure to go.
(2)グラハム・ベル設立のヴォルタ研究所ベルとティンターは1885年、ボール紙の蝋管による
  フォノグラフを完成。 
  (米国出張の陸奥宗光外務大臣は1886年米国土産として日本へ持ち帰っている。)
2.ベルリナーの平円盤時代:1887(明治20年)〜1924(大正13年)
(1)1887年に円盤型レコードに横振動録音方式蓄音機「グラモフォン」を発明し、1894年
  円盤レコードプレス製造に成功。1895年「手回し式」から「ゼンマイ式」にしたり、1897年
  原材料を硬質ゴムから天然樹脂シェラックに改良し、大量生産技術を確立する。
    (参考メモ)ベルリナーの声(歴史的スピーチ・きらきら星)
        Twinkle twinkle, little star, How I wonder what you are.
                  Up above the world so high, Like a diamond in the sky. 
(2)1897年、イギリスの英グラモフォン社を設立。
3.電気吹き込み時代:1924(大正13年)1948(昭和23年)
(1)米国WE(ウェスタンエレクトリック)が電気吹き込み方式を完成。高忠実度(ハイフィディリティ)
  高音質で、200〜56000Hzまで録音可能なSP(スタンダートプレイング)レコードが誕生。
(2)1927(昭和2年)日本ビクター社設立。日蓄はコロンビア傘下で洋楽レコード国産プレス開始。
  戦前の最盛期は1936年(昭和11年)約3000万枚。
4.LPレコード時代:1948(昭和23年)〜1991(平成3年)
(1)1939年からコロンビア研究所が研究していたLP(ロングプレイン)レコードが1948年より
  発売開始。
(2)1980(昭和55年)年間売り上げ枚数2000万枚がピーク。1982年10月、ソニーと
  フィリップス開発のCD(コンパクトディスク)が登場、レコードは衰退していく。

<蓄音機のサウンドボックスと針>

 蓄音機における「サウンドボックス」とは、レコードの溝から拾った針先の振動を空気の振動へ変換する
装置で、蓄音機の心臓部分と言えます。
 針の振動は「スタイラズバー」を通じて振動板へ伝えられ、バーに設けられた支点によっててこの原理で
振幅が増幅されます。次に振動板が空気を振るわせ、聴く人の耳に「音」となって変換されます。
蓄音機の技術開発では、此の部分の機構の変換効率と精度を追求したのです。
 サウンドボックスは、気密性が悪ければ音質が悪化するので、製造には高精度の加工技術が
必要とされました。

 振動板には、薄くて丈夫な素材が求められ、マイカ(雲母)に始まり、ジュラルミンなどの金属が
用いられるようになり、強度を出して周波数特性を整えるために、プレスで襞を付けるなどの、
高度な加工まで試されました。

 針の素材には、主として鉄などの金属材料、あるいは竹などの硬質素材が、さらにはサボテン棘など
植物素材が用いられましたが、音の追求と耐久性向上のため、鹿の角、ガラス、クリスタル、陶器なども
試されています。

(左)鉄針(最強音用針と弱音用針)(中)竹針(三角形断面、先端45度斜め切り)(右)ソーン針(サボテン棘芯)

<竹針とその取扱い>

 サウンドボックスへの竹針の取り付け要領は次の写真の通りです。

 各種の竹針の一例と竹針の先端を整える為の竹針挟みを示します。
 竹針の竹素材はどんな竹でも良いわけではなく、尺八用の竹とか、占い用の筮竹(せいちく)などが用い
られているのです。ここで前述の尺八の話とつながるわけです。変わったところでは、麻雀の竹牌も使う
人もあるようです。
 竹針は断面が正三角形でその一端を45度の角度で鋭く切り落とし、切り口の尖った頂点を竹針として、
レコード面の溝に落とします。
 鋏は、現在では大変珍しく一般には見かけませんが、販売店は今でも存在するようです。

 さて肝腎の竹針の創り出す音は、鉄針のそれに対してどのような違いがあるのでしょうか。
 この方面の愛好家の意見は次のようになっています。
 「鉄針に対して竹針は、その針音が少なく、まろやかで、耳当たりが良く、好感が持てる。
  欠点としてレコード盤面の三分の二も進めば針先がつぶれて、ひどい音になってします。」
 さらには、あまり竹針ばかりを使っていると、レコードの盤面が白く変色して行き、レコードの溝に
 竹の微細な芥を付着させることになるようです。
 したがって、鑑賞しようとする演奏曲目の内容に応じて、「針音が少なく、まろやか」な音の再生を
期待したい場合は、竹針を「時々」用いるのは許されるが、常時竹針演奏というのは、避ける
べきである、ということになるのでしょうか。

 竹の醸し出す音楽世界も、竹針から流れ出てくる蓄音機音楽まで拡げ、響かせることが出来ました。

 以上「竹の創り出す音楽世界」の広さが改めて再認識された次第です。


<3.参考メモ集>

<(参考メモ・その1)邦楽器・笙>

 竹製の管楽器として代表的な物は雅楽での篠笛、能管、竜笛、笙などで、近世では尺八と言えましょう。
 前述の尺八に加えて、竹製楽器の笙を採りあげてみます。

(1)笙に関する話題
  嘗て重要無形文化財の雅楽器師・山田全一氏の雅楽器に関する興味ある講演を拝聴しました。
  山田氏の笙に関する最近の新聞情報を(参考メモ・その3)に添付します。
 楽器の解説では、十七本あるリード(「簧(した)」)管のうち、二本(「也」「毛」)
にはリードが取り付けられて居らず、鳴らないということに興味が湧きました。
 すなわち、この二本のリード管のことから、後世の「やぼ」という語句が出てきたのでは
ないかと見られているとのこと。(「毛」は、むかし「ぼ」と発音されていたもの)

 演奏方法では、鳴らしたい竹管の指孔を指で押さえながら、吹くあるいは吸うを交互に
繰り返すとのこと。発音機構は一般に馴染みの「ハーモニカ」によく似ています。
 また竹管を纏め差し込んである「頭」部分が吹き込んだ息で、湿気をおびて、リードに
水滴が溜まると振動が狂い、音が出にくくなるので、演奏直前まで、笙の下部の「頭」部分を
暖めておく準備が演奏者には求めらるという。聴衆にはわからない苦労が演奏者には
有るわけです。

 もう一点は、平安朝廷における雅楽の演奏(管絃の遊び)の「楽士はすべて女性であった」
という講師のご講演でしたが、興味のあるところです。

  最近の新聞記事(平成20年3月21日付毎日新聞)によりますと、講演者の山田師は、
鎌倉時代の名匠頼尊の手になった笙の名器を鑑定しておられます。

<(参考メモ・その2)世界各国の竹楽器>

 竹を素材とした楽器は、主として、アジアの諸国に多くの伝統的な物が見られるようです。
 楽器博物館(大阪音楽大学付属施設)所蔵の竹材楽器を国別にみますと、次の一覧表のようになり、
その代表的な楽器の写真も添付します。
国名楽器名写真番号
日本尺八、篳篥、笙、一切笛、竹笛、竹法螺、竜笛・横笛、高麗笛、 神楽笛、能管(能楽、歌舞伎の囃子)、篠笛、四つ竹(竹製カスタネット)、 コキリコ(綾竹・打楽器の一種)、ささら(すりざさら、びんざさら・擦音楽器)、調子笛(楽器調律用)、 初音(うぐいす笛)、カッコウ笛、鈴虫笛、魚鼓、ムックリ(アイヌ民族口笛)、
韓国・中国大・中・小のGum(6孔竹笛)、4〜5孔のSo(韓国竹笛)、唐笛、笛子、笙、管子、6孔の BAWU(6孔の縦笛)、コウディ(中国苗族の口笛)、トウリャン(中国ジインボー族の竹笛)、クイクイ(台湾高山族の鼻笛)、リーレ(中国海南島の竹笛)、シャリオン(中国雲南省ハニ族の竹笛)韓国の竹笛(写真BM−1)
中国の笙(写真BM−2)
タイ・カンボジア・フィリピンパイオー(カンボジアの7孔竹笛)、ケン(タイ・カンボジアの笙)、ナウ、ケーン(ラオスの笙)、ピー・ソー(6孔の竹笛)、クルイ・ウー、クルイ・ピー・アン・オウ、クルイ・リープ(7〜8孔の竹笛)、トンガリ(フィリピン・カリンガ族の鼻笛)、バリンビン(フィリピン・カリンガ族の竹スリット笛)、スルダス(フィリピン・タガビリ族の竹筒琴)、ウンキョン(フィリピンの3孔竹笛)、トガリ(フィリピンの3孔竹笛)、ブルボン(フィリピンの竹法螺)、パープン(ベトナムのバーナル族の竹笛)、パターンフッグ(フィリピン・ルソン島の1孔竹笛)、タンラン(タイの竹筒打楽器)、トルン(ベトナムの竹琴)
インドネシア・オセアニアグンデル・ワヤン(竹製竪琴)、スリン(4〜6孔インドネシア竹笛)、バンシ(スマトラ島竹笛)、ラブー(インドネシアカリマンタンの笙の一種)、ンガル(ミクロネシア・セップ島竹笛)、オヘ・ハノ・イフ(ポリネシアの鼻笛)、プイリ(ポリネシアの擦音楽器)、スサップ(パプアニューギニア擦音楽器)、パンパイプ(パプアニューギニアの竹琴)、ジュゴック(インドネシアバリ島の打楽器)、デイ・ジュ・ドウ(オーストラリアのアボリニ族竹笛)、うなり木(インドネシアカリマンタンの笛)、コエロアトム(インドネシアスラベシ島の1孔笛)、チャチャロ(インドネシアの竹スリットドラム)、 精霊の爪(パプアニューギニア・チングー族の指のカスタネット)、アンクルン(インドネシアの竹打楽器)、ササンドウー(チモール島の竹管楽器)グンデル・ワヤン(写真BMー3)、ジュゴック(写真BM−4)
印度・中近東・トルコバーンスリー(印度の6孔竹笛)、アルゴーザ(印度の6孔竹笛)、プーンギー(日本竹の6孔竹笛)、デイッリ・カヴァル(トルコの7孔竹笛)、ネイ(トルコの6孔の竹笛)、蛇使いの笛(印度)、
・アフリカ・南北アメリカヴァリハ(マダカスガルの竹筒琴)、ウムウィロンギ(タンザニアの4孔竹笛)、ワシント(エチオピアの4孔竹笛)、シーク(ペルー・ボリビア、アンデス地方のパンパイプ)、ロンダドール(エクアドルの竹笛)、 モセーニョ(ボリビアの吹き口小管付7孔竹笛)、ピンキーショ(ボリビアの6孔竹笛)、ケーナ(ペルー・ボリビアの6孔竹笛)、Whistle Flute(メキシコの4孔竹笛)、テポノーストリ(メキシコ・アスティカの竹スリットドラム)、ベンブータンブー(トリニダート島の竹打楽器)、ロンダール(写真BMー5)、シーク(写真BM−6)

(左)(写真BM−1)韓国の竹笛(右)写真BM−2)中国の笙

(左)(写真BM−3)インドネシアの竹琴(右)(写真BM−4)中国の笙

(左)(写真BM−5)エクアドルの竹琴(右)(写真BM−4)中国の笙

(左)(写真BM−6)南米アンデスのバンパイプ(右)(写真BM−7)東南アジア地域の竹ドラム類

ホームページ管理人申酉人辛
(万葉歌人名:栗木幸麻呂)


平成20年4月4日   *** 編集責任・奈華仁志 ***

ご感想は、E-mail先まで、お寄せ下さい。
なばなひとし迷想録目次ページ に戻る。 磯城島綜芸堂目次ページ に戻る。