平成社会の探索



つれづれ閑談 ー平成の徒然草ー
<定年>は<諦年>なり
<諦念>人生への<箴言>を<進言> 


第004話「遺産の心得」
(徒然草:第140段より)
!!!!! 箴言の箇条書き !!!!!
*知恵ある人は財産を残さない。
*遺産が多くあると「詰まらぬものばかり貯めていた」とか、
人のひがみで「こんなものに執着していたのか」などと言われよう。
*なまじっか遺産があると相続争いのもとになる。
残したいものが有れば、存命中に済ませておけ。
*持ち物は日常生活に最低限必要なものにとどめよ。
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*************  平成の閑談  **************
 兼好法師が13世紀に悟っていた「財産を残さぬこと」は、800年経った平成現代でも何ら変わることのない 「箴言」と見なしたいところです。残念ながら800年経ってもこの「箴言」を実行する良い解決策が得られていないと いうのが実態でしょう。
人間という生き物は動物と違って「ものをもつこと」に非常に執着する特性をもっています。 人間以外の動物で「衣食住」という人間には生存のために「必要にして十分な条件」をもっているものには何が あるのでしょうか。、せいぜい「住」としての住処、いわゆる「巣」ぐらいのものでしょう。 「衣」を纏っている動物は先ず居りません。「食」をため込んでいる動物など見たことがありません。せいぜい働き蟻の 集団ぐらいでしょうか。どうして人間だけ、「衣」に拘り、「食」に専念し、「もの」をため込むのでしょうか。それだけ、 生命も含めた「もの」の「死滅」に対する恐怖心が強いと言うことでしょうか。
 これまで「美田を子孫に残すな」などといってきた本音は、どうも全く逆のことであるようです。すなわち「美田を 残してくれる先祖が望ましい」と思っているふしが諺の裏に伺えます。なまじっかこういった「ものへの執着心」がある ために人間には、道徳とか宗教というような、人の心を有る方向に規制したり、矯正したり、拘束したりするための 手段が必要なのでしょう。
その証拠に動物は集団で生活していながら、集団であるいは一個でお祈りしたり、文言を 唱えたりしているところは見たことも聞いたと事もありません。「ものに執着しない」から、遺産も必要ないし、宗教も 無用のものとなるのでしょう。ただし集団生活共同体としての道徳にも匹敵する「約束事」は何らかあるようです。 一度動物学者に教えていただきたいところです。「遺産」に拘る人々は是非とも耳を傾けるべきでしょう。
*************  世事雑感   ***************
 有名人の遺産相続の話は、何かとスキャンダルな話題になりがちです。有名人や資産家が残してくれるものは 社会全般のためになるいわゆる「慈善事業的な遺産」が最も望ましいところです。アメリカの億万長者はほとんどが 社会に個人資産を還元することを義務のように思っており、周りもそれが当然と考えているようです。これまでにも有名な ところではカーネギー財団などがあります。日本でもすこしづつ此の考えが浸透しつつあるようですが、残念ながら 「もたざるもの」は、未だ充分な享受を得ているとは言えません。
 同じ残すなら「金銭的遺産」よりも、それ以外の遺産の方がよほど価値があるのではないでしょうか。たとえば、 芸術作品(絵画、彫刻、音楽など)や文芸作品(学術的研究、小説、詩歌など)などです。さらには個人でなく 集団、国家、民族など多数の人が集まって後世に残すもの「遺産」としては、それぞれの「集団の伝統」や 「民族の歴史」というような「非金銭的遺産」を伝えて発展させていくことが大切な事になるでしょう。
人類が一丸となって取り組んでいるのが、「地球という環境」を後世の民族に「世界遺産」という形で伝承していく 機構です。
 近年「世界遺産」に登録された「金閣寺」に関連して、 「世界遺産情報」をリンクしておきます。
***************  参考メモ欄  ****************
 何時の世でも「相続税」の話は、気になる一方で、痛し痒しの事柄となります。最近の相続税の一例を引用して おきましょう。
 平成14年(2002年)の相続税は国税庁の報告に拠りますと、次のようになっています。
   相続税総額  1兆1263億円  被相続人 44438人
      平成13年(2001年)の死亡者  984951人
     これらの統計情報から、二三の分析をしてみましょう。
 まず、相続税額は国家予算にどれだけ関わっているかと見ますと、一例平成年間の国家予算は大凡80兆円と なっていますから、約1.4%に当たります。
 平成14年現在の総人口は1億2743万5000人ですから、死亡率は、0.77%で、毎年相続税に関係する 人口は、死亡者の遺産配分に関係する遺族は平均として配偶者と子ども2人の三人としますと、約296万人 (総人口の2.3%)となります。
 被相続人一人あたり平均相続税は2535万円となります。対象となった遺産総額が気になります。相続税法から 課税財産の総額を想定してみましょう。
 現在の相続税法では、基礎控除として定額控除5000万円と相続人数比例控除として一人1000万円と なっています。遺族の平均構成として配偶者と子ども2人を想定しますと、死亡者一人につき8000万円の 控除を受けられます。したがって、(98.5万人X3人)ー(4.5万人/3人)=294万人が関わる遺産総額は 8000万円以下、すなわち97万人x8000万円=77.6兆円以下であったことになります。
 被相続人44438人の内訳は平均家族構成を仮定しますと、大凡15000件となります。一家族あたりの相続税 総額は11263億円÷14813家族=7600万円で、分担は配偶者3800万円で、子ども一人が1900万円となります。
 累進課税率として遺産取得分額別に課税率は10%〜70%まで、段階的に適用されます。 例えば遺産総額が 4億円超から20億円までの時は税率60%で、控除額は7520万円です。
 3800万円の相続税分から遺産分配金を逆算します。
  (配偶者控除を考慮に入れる場合)
 例えば配偶者の場合、配偶者控除が最高1億6000万円までありますから、3800万円はそれを超過している分と 仮定して計算します。
 (3800万円+1億6000万円+7520万円)÷累進税率60%÷法定配偶者相続分(1/2)=9億1080万円 となります。この総額に基礎控除の8000万円を足しますと、大凡10億円ほどになります。
 ざっと、平均家族一軒あたり、約10億円の遺産総額であったとしますと、平成14年の課税対象の遺産総額は 10億円×14813家族=15兆円で、遺産の大凡7.5%(1兆1263億円÷15兆円)は、税金で国に戻された ことになります。
(配偶者控除を考慮に入れない場合)
 (3800万円+1520万円)÷累進課税率40%÷法定配偶者相続分(1/2)=2億6600万円 となります。この総額に基礎控除8000万円を足して、大凡3.5億円になります。
 3.5億円×14813家族=5.2兆円で、遺産の21.7%が国庫に入ったことになります。
とにかく税金は数字の計算だけでも頭が痛くなります。控除や特例その他の諸条件を考慮に入れていきますと、 税金の実態の内訳の実態は確たる形で捕らえることは至難の業です。

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平成17年11月11日   *** 編集責任・奈華仁志 ***


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