平成社会の探索



つれづれ閑談 ー平成の徒然草ー
<定年>は<諦年>なり
<諦念>人生への<箴言>を<進言> 


第003話「限りなき俗欲」
(徒然草:第242段より)
!!!!! 箴言の箇条書き !!!!!
*人生の「順境」や「逆境」は、俗世の「苦」を避け「楽」を求めることによる観念である。
*人間の「楽(好み愛すること)」を求める心は、無際限である。
*「三楽」とは、「名(声)」(行状と学芸の誉れ)、色欲、味(食欲)である。
*「三楽」は人間の本性に逆らい、非常な心の苦悩を伴うことから、求めるべきものでない。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
***************  平成の閑談  ****************
 人間の欲望は何時の時代でも如何なる環境に於いてもきりがなく、とどまるところがありません。
 解説資料(例えば、渡部昇一「ことばコンセプト事典」第一法規出版(株)、平成五年四月)により ますと、「地球上の存在する主体が満足を求める必然的な衝動」で、「主体が有機体の場合は、常に 新陳代謝を求めるために、代謝に伴う欠乏を補おうとする適応行為である」としています。
これは「欲求」とでも言うべき言葉の概念で、主体の生存のための必須の行為であって避けることが 出来ません。
しかし「欲望」という言葉に切り替えますと、その概念は「人間だけが持つ必要以上の欲求」という 限定された内容になるように響きます。
 兼好法師が生き抜いた中世の13世紀〜14世紀においても、また現代の20〜21世紀に於いても、 「楽」を追い求める状態には変りません。
 具体的な欲望の対象は違っても、それらの拠ってきたる所は、人間本性の「楽求」に拠るもので、 徒然草にいうところの「名声、色欲、食欲」です。「名声」欲は、欲の中でも、内容がかなり人間的 ですが、「色欲」や「食欲」は、動物的「楽」ですから、全くなしで済ませることが出来ません。
従って内容の順序から言いますと、
まず(その1)生物的な「食欲」、
次に(その2)種族を維持 するための動物的「性欲」、それに雌雄としての「色欲」、
そして(その3)社会的動物としての 人間独特の「名声欲」
ということになりましょうか。
   仏教では、もっと具体的に分類し、綿々と諭しています。後述の参考メモを参照願います。
***************  世事雑感   *****************
 毎日の新聞を眺めておりますと、詰まるところ、人間の「楽」を求めることから来る「欲」の 塊のなすいろいろな行状としか言いようがないことばかりの「三面記事」で充たされていることに がっかりします。一例を平成17年9月1日の新聞記事から拾ってみます。
(その1)第一面 「イラク・バクダッド・イスラム教シーア派集会で、群衆騒動、600人死亡」
宗教の宗派対立で、自爆テロ噂が逃げまどう騒動になり、混乱で死者続出したもの。
この大量死者の騒動原因は、爆破されたくないという「生存欲」に基づいているのですが、それ以上に 人間独特の「宗教的集団行動欲」とでも分類すべきではないでしょうか。
(その2)第一面「全国チェーン店のスーパー大手会社が全国の店舗数を大幅削減して業績不振を打開」
20世紀後半から末まで、拡大に拡大の企業規模を膨らませてきた全国展開のスーパーマーケット 事業も、市場形態の変化で、企業体質の改善が求められてきました。
自分の事業だけ儲けたいという単純な「営利欲」の商売根性では、もはややっていけない証でしょう。
(その3)第三面「米国ハリケーン・「水没」街で略奪横行」
まさに火事場泥棒そのものです。人間とはこんなものでしょう。何千年「人間業」をやったら、人間は 「まともな人間」になるのでしょうか。
***************  参考メモ欄  ****************
:::::::::::::::  仏教の「欲」に対する教え   ::::::::::::::::::
(参考資料:金岡秀友・増谷文雄「仏教日常辞典」太陽出版(1994年12月)
仏教での欲界とは、欲望の支配する世界で、三界の一つ。
この世界(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・六欲天)の衆生は全て食欲、色欲、眠欲に耽るという。
因みに仏教の世界観を著す「三界」とは、衆生が流転する迷いの世界で、
欲界(淫欲、色欲、睡眠欲の強い衆生が住むところ)
色界(諸欲を離れた衆生が住むところ)
無色界(色を離れた衆生がすむところ)
また五欲とは、五境(色・声・香・味・触)に愛着すること。
(これらはいずれも前述の「生物的欲求」の内容と言えましょう。)
:::::::::::::::  「欲」に関する諺あれこれ  :::::::::::::::
「欲に頂きなし」
「欲は身を失う」
「欲に欲が付く」
「欲を知らぬ馬鹿もなし」
「欲望は人間の本質である」
「裕福になる近道は欲望を減らすことである。」
などなど、「欲」同様、切りがありません。

OK画伯のギャラリー





平成17年9月5日   *** 編集責任・奈華仁志 ***


ご感想は、E-mail先まで、お寄せ下さい。
なばなひとし迷想録目次ページ に戻る。 磯城島綜芸堂目次ページ に戻る。