平成社会の探索



つれづれ閑談 ー平成の徒然草ー
<定年>は<諦年>なり
<諦念>人生への<箴言>を<進言> 


第018話「老若比較論」
(徒然草:第172段より)
ーーーーーーーー 箴言の箇条書き ーーーーーーーー
*「若者」の一般論
(1)血気が漲って、物事に感じやすく、欲情も盛ん。色情に溺れ、情懐に耽る。
    (2)身を危険にさらし砕けやすい。義に勇んで一生を投げ出す。身を長く安全に保つことは考えない。
(3)華美な物を好んで金銀を浪費しやすい、一方で気まぐれにわびしい境涯に身をゆだねる。
(4)気負いの勇み心が旺盛で、争いを起したり、羨望したり慚愧したり、気分がむらで日毎定まらない。
(5)容姿にかけて老人に勝る。
*「老人」の一般論
(1)精神が衰え、物事に淡泊になり、何事にも感動しなくなる。
(2)心が平静で、無益なことに手を出さない。
(3)我が身の苦労少なく、他人にも迷惑を掛けまいと心がける。
(4)理性の点で若者に勝る。
***********  平成の閑談  **********
 兼好法師の言わんとする老人と若者の特性は、何時の時代でも共通する事象で、国や場所をも問わない
人類の全民俗共通の事象と言えそうです。
 ということは、これらの特徴が見いだされない「若者」や「老人」は、それぞれ「若者」らしくない、
また「老人」らしくないということになる。それぞれ「若者は若者らしく」「老人は老人らしく」で
いいのではないでしょうか。逆に、「若者」は「老人」らしく、「老人」は「若者」らしく、というのも
なんとも変な状況でしょう。
 「若者」がどことなく、世間を知り抜いた「さめた」「老人」的態度を示すと、「老人」世代が
なんだか腑に落ちないで、落ち着かない気分になりそうです。
 一方ほどほどの年であるのに、世間を無視したような「老人」らしくない「老人」は、扱いにくい
でしょうし、そういう「老人」を受け入れる環境や人間関係は未だできあがっているとは言えないようです。
 ところが、「平成の高齢化社会」では、「元気のない若者」と「息巻く老人」世代それぞれに
「らしくない」現象がちらついているようです。まだ日本は、西欧のような成熟し安定した「高齢化社会」を
確定させていないからでしょうか。

 因みに、徒然草第168段には、次のような「老人」に関する良いところ悪いところの記述の部分があります。
 「一道に傑出した才能有る老人がその道の先達として、慕われるほどはいいが、態度に謙虚さがなく、
  勇み出る態度をとり続けると、嫌みになる。したがって、一通り知っていても漫然と吹聴するのは大した
  才能でない証拠。明確にわきまえておりません、ぐらいの謙虚さがあってほしいもの。」

 老人はこれまでの自分の人生で体験してきたことをどうしても正当化して、我田引水論に走りがち。
 すなわち何時の時代のどんな社会でも、「若者」は「老人」になりえず、まして「老人」は「若者」に
なってはこまるでしょう。「若者」からみた理想の「老人像」や「老人」から見た理想の「若者像」は、
それぞれに手前勝手な者で、両者が合意できることはないでしょう。
 「老若論」の要は「ほどほどの若者らしさ」「ほどほどの老人らしさ」を是とすることに落ち着くので
あろうか。
************  世事雑感   *************
「成人の日」の「若者」と「敬老の日」の「老人」を観察しますと、次のようになります。

「成人の日」
(1)一人前であることを、周囲に認めさせようと、無理な行動を取りがち。
(2)青少年で禁止されていた束縛を無理矢理解き放とうとする。すなわち、飲酒、喫煙など。
(3)効率よく使えないのが、「選挙権」でしょうか。

「敬老の日」
(1)「敬ってくれ」と強要する態度ありあり。この日だけが「一人前」。
   残りの一年364日は、「加齢臭の発散源」で、「粗大ゴミ扱い」の「うさんくさい存在」。
(2)自慢できる物は、もはや「年齢」以外無しという、寂しさ。
(3)年齢相応に「何が世の中のために出来るか」を考えず、「誰が何時、自分にだけ都合のいい
   何かしてくれないか」とばかり考える事が多くなる。

(4)本当の「敬老の日」に向かっての今後の課題ー高齢者を意義ある存在に向かわせるには?
   有意義な高齢者とは何か。社会がその存在を有効に活用できる機構を創出することであろう。
   如何なる先進国、高齢者社会国でも未だに、実現できていない。
   生物の中にあって人間は、万物の霊長である、といえるだけの存在状態を作り得たか。
   百万年ともそれ以上とも推定されているその生存歴史の中にあっても、未だに、理想形態が
   見いだし得ていない。本来生物は宗教が教えるところの「生者必滅」であることは覆せないが。
   あと何万年、何十万年かければ、その答えを出せるのか。その前に、一刻も早く、人間同士の
   殺しあいをやめるプロセスを確立させることであろうが。
 
************  参考メモ欄  *************
1.平成20年代の青年の現状
    総務省統計局2011年1月1日現在の人口統計
   卯年生まれの人口 1008万人 総人口1億2730万人の8%
           男子490万人 女子517万人
   新成人(2010年中に成人に達した人口)124万人 
           男子 63万人 女子 61万人
  新成人の人口推移は次のように漸減の一途を辿っている。このままで推移すると新成人の総人口に占める
  割合は、1%を割ってしまう状況になる。
2.高齢者の人口推移
  総務省統計局2002年の人口統計
  減る一方の青年層人口に対して、65歳以上の高齢者人口は増える一方。
   65歳以上の推計人口 2362万人 総人口の19%
   75歳以上の推計人口 1003万人 総人口の 8%
  高齢者の人口推移は次のように増加の一途を辿っている。このままで推移すると、高齢者の総人口に占める
  割合は、30%を越えてしまう事態になる。

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平成23年8月12日   *** 編集責任・奈華仁志 ***


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