平成社会の探索



つれづれ閑談 ー平成の徒然草ー
<定年>は<諦年>なり
<諦念>人生への<箴言>を<進言> 


第014話「勝負事は悪事」
(徒然草:第111段より)
ーーーーーーーー 箴言の箇条書き ーーーーーーーー
「囲碁・双六好みて明かし暮らす人は、四重・五逆にもまされる悪事とぞ思ふ」
と、あるひじりの申しし事、耳にとどまりて、いみじくおぼえ侍る。
*************  平成の閑談  ************
 兼好法師の時代(1283?〜1352?)に、人々はどのような「遊び事」(法師の言葉を
かりるならば「悪事」)を働いて「浮世を楽しく」過ごしていたのでしょうか。当時はここで
言及されているように「囲碁」や「双六」が大変流行っていたのでしょう。
  この時代から大凡600年ほど前の聖武天皇(701〜756)の頃の文物を残している
正倉院御物の中にすでに遊具が遺されているのです。

 このように時代を遡って人々の「遊び道具」を振り返ってゆきますと、何時の時代でも
何らかの遊びの手段は準備されていたとみていいでしょう。
 何時の世でも事人間が関係する社会において「遊び事のない世界はない」と言っても
過言ではないでしょう。
 「人はパンのみに生きるにあらず」という例えを言い換えるならば、「人は働くことのみに
生きるにあらず」であって、むしろ「人が働くのは遊ぶためなり」と言い直しできそうです。

 兼好法師の時代では、遊び事で挙げられる代表が「囲碁・双六」であったものが、
それから700年ほど経った平成現代社会においての「遊び道具」は、男女の区別、
年齢層を問わず、それこそ数え上げられないほどの種類の広さと時間のかけ方の深さを
持っているのです。
 こうなりますと、当然「働いては居られない」で、「遊び事に夢中に成らざるを得ない」と
いう事態に陥ります。
 現に現代人は「遊び事」の合間に「働いている」と行っても良いくらいでしょう。しがたって、
現代こそ兼好法師が言い残されたように「勝負事は悪事」と遊ぶことに相当強い抑制力を
かけて丁度良い按配となるのではないでしょうか。
************  世事雑感   *************


 兼好法師は、「囲碁・双六」は「四重・五逆」の「悪事」だといわれるが、平成現代の
社会では、それ以上の悪事が後を絶たないために、「囲碁・双六」など、悪事に挙げる
隙間さえありません。
 毎日の新聞記事やテレビニュースを見ておりますと、賄賂など貪欲な事件は後を絶ちません。
 「新聞記事は、仏教経典に言う悪事の日報」であるというのはいいすぎでしょうか。
 殺人事件の繰り返し、人の命の軽薄さ、ああ、いやになりますね。
 「四重・五逆」どころか、「十悪」でも未だ数え切れない「悪事」がどんどんと湧き出てくるのが、
兼好法師さんの鎌倉時代と異なる平成現代社会なのです。

 現代では、「囲碁・双六」の内、「双六」は見かけなくなりましたが、「囲碁」のみは、
多くの愛好家の間で、高尚な趣味の一つに挙げられています。その「囲碁」もある人達に
とっては、単ある穏当な暇つぶしの娯楽にすぎない場合もあり、また一方では、「囲碁」に
人生を賭けているプロフェショナルの打ち手も多くおり、集団を組んで、段位を与えられることに
喜びを見出し、又一方では、試合そのものを楽しんでいる人々が何百万人といると思われます。
 (注)財団法人日本棋院
   大正13年(1924)7月発足した日本の囲碁界の総本山で、
   約300人の棋士・女流棋士を有し、約350万人の囲碁ファンの中心機関になっている。
************  参考メモ欄  *************
*四重:仏教経典で言う「四重罪」のことで、殺生・偸盗・邪淫・妄語の戒めを犯す重罪。
     人は絶えずこれらの「四重罪」を日々侵し続けているための「仏の戒め」なのでしょう。
*五逆:同じく仏教用語。
     母を殺す・父を殺す・阿羅漢を殺す・和合の僧を仲違いさせる・仏身から血を出すこと。

 仏教経典には、これらの罪悪以外にいろいろの戒めを教えているのです。
 心で造る罪3種ー口で造る罪4種ー身体で造る罪3種 合計「十悪」もあるのです。

 心で造る罪 貪欲(とんよく・欲)・瞋恚(しんい・怒り)・愚痴(ぐち・ぐち)
         ・・・・貪・瞋・痴は三毒とされる。
 口で造る罪 綺語(口で驚かす)・両舌(二枚舌)・悪口(あっこう)・
         妄語(もうご・嘘をつくこと)
 体で造る罪 殺生(生き物を殺す罪)・偸盗(ちゅうとう・人の物を盗むこと)・
                   邪淫(淫らな行為)

 ここに並べられた「十悪」の全てとは言いませんが、どれか一つを採りあげてみますと、
現代人は「十悪の一悪」ぐらい「朝飯前」、と言っては言い過ぎでしょうか。

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平成20年4月25日   *** 編集責任・奈華仁志 ***


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