平成社会の探索



つれづれ閑談 ー平成の徒然草ー
<定年>は<諦年>なり
<諦念>人生への<箴言>を<進言> 


第012話「年相応」
(徒然草:第113段より)
ーーーーーーーー 箴言の箇条書き ーーーーーーーー
(1)四十にもなって男女のこと、他人の身の上を「言ひたはぶるる」ー見苦しい。
(2)「老人の若き人にまじはりて」、「興あらん」との「物言ひ」ー見苦しい。
(3)「数ならぬ身にて、世の覚えある人をへだてなきさまに言ふ」ー見苦しい。
(4)「貧しきところに酒宴好み」ー見苦しい。
*************  平成の閑談  ************
 この段に兼好法師が「似げなく、見苦しけれ」また、「聞きにくく見苦しき事」としてあげられた 事例は、
現代でも全く変わるところなく「見苦しい」。中味を少々変えればいいわけです。

(1)「四十にもなって」というのは、人生五十年の時の四十歳ですから、現代に換算しますと、
80歳掛けることの50分の40で64歳と読み替えればいいわけです。所謂年金を貰う年に
なっても未だに男女の色事をあれこれと言いはやし、他人の噂を仰々しく話する人間は
どうしようもない年不相応な人間だと決めつけています。
還暦を迎えればすでに若いときの色事は既に十分知り尽くして、卒業しているはず。それを今さら
面白可笑しくはなされても話される方は白けてしまいましょう。
まあ年金の話か、身体の調子の悪い部分か、名医者の話でもやっていれば、無難でしょう。

(2)老人は老人仲間で楽しい調子の合う話をやっていれば宜しい。なまじっか賑々しく「若い者には
負けない」とばかり、若い仲間に出しゃばると嫌われましょう。

(3)有名人や著名人を知っていると言いふらす人に、中味のある人はおりません。これは何時の
時代でも言えることでしょう。兼好さんも嫌うところは、現代でも同じです。

(4)お金がないのに見栄を張る人も、信用がおけません。
以上兼好法師が挙げた駄目な「見苦しい」人間の條件は、現代の判断基準にも合致しましょう。

************  世事雑感   *************

「いい年をして」どうして「見苦しい」事々を敢えて人前で行動に移すのでしょうか。
邪推するところ、上述の「見苦しい」事共について、いずれも若いときに「年相応」のことが
その人は「出来なかった」か、あるいは「させてもらえなかった」、のではないかと思われます。
若年層のやることを歳をとってからでもやることで、「歳が若くなる」とでも思っている
のでしょうか。

歳を取ると、若いときのように「自慢できる事柄が少なくなる」事は確かです。若いときはあれも
これも若さに任せてどんどん消化して行けたものが、年齢と共に、年齢など物理的にも、
金銭面の経済的にも思うようになりません。
思うようになる友達もなくなり、どうしても自分の対処できる範囲の事に留まってしまいましょう。
そしてついには「自慢できるのは歳だけ」という、誠に寂しい何の取り柄もない事柄になって
しまいます。それでも、他人よりも一つでも歳が上であれば何かえらくなったように思ってしまう
という「嫌われの最たる状態」になります。それでもそれ以上の何もないものですから、
「年齢」にしがみつく事になるのです。
哀れとしか言いようがありません。

また、逆の場合もまた困りものです。すなわち、まだ青春の真っ直中なのに、どことなく年寄り
じみた言い振り、身振り、をされると、これまた白けてしまいましょう。
要は「若者は若者らしく」「老人は老人らしく」「年相応」に、ということでしょう。

************  参考メモ欄  *************
 老年になっても「格好だけ若い者の真似をして若返ったつもりになっている人」に耳寄りなお話。
 「格好だけでは若返りません。心の持ち方が一番重要です。」というのが、知恵ある人からの箴言。
 さて、ここに関心ある人々の中で注目されている サムエル・ウルマンの「青春」という英語で
書かれた詩があります。
(英文は難しい構文ではなく、精々中学英語で十分理解できるので、やや難解な単語のみ
訳文を付けておきます。)

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<YOUTH> by SAMUEL ULLMAN

Youth is not a time of life;(人生のある期間)
it is a state of mind; (こころの様相・状態)
it is not a matter of rosy (バラ色の)cheeks, red lips and supple(しなやかな) knees;
it is a matter of the will(意志), a quality of the imagination(想像力),
a vigor of the emotions;(もえあがる情熱)
it is the freshness of the deep springs of life.(汲めども尽きぬ泉)

Youth means a temperamental predominance of courage (打ち勝とうとする勇気)
over timidity of the appetite,(臆病になろうとする気持ちに)
for adventure over the love of ease.(安易に流れない冒険)
This often exists in a man of sixty more than a body of twenty.
Nobody grows old merely by a number of years. (年を数えるだけで老いるのではない)
We grow old by deserting our ideals.(理想を失うことで老いる)

Years may wrinkle the skin,(しわができる)
but to give up enthusiasm(情熱を失うこと) wrinkles the soul.(心はしぼむ)
Worry, fear, self-distrust(失望) bows the heart(気持ちを折れ曲げる)
and turns the spirit back to dust.(意気込みの精神は捨てられる)

Whether sixty or sixteen, there is
in every human being's heart the lure of wonder, (驚異に心をときめかすこと)
the unfailing child-like appetite of what's next, (幼子の道への探求心)
and the joy of the game of living. (生き抜こうとする事への喜び)
In the center of your heart and my heart
there is a wireless station;(こころを交わそうとする)
so long as it receives messages
of beauty, hope, cheer, courage and power
from men and from the Infinite(神),
so long are you young.

When the aerials(霊感) are down,
and your spirit is covered with snows of cynicism(冷笑の氷)
and the ice of pessimism(悲嘆の氷),
then you are grown old, even at twenty,
but as long as your aerials are up,
to catch the waves of optimism(最善観の波),
there is hope you may die young at eighty.

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平成19年8月30日   *** 編集責任・奈華仁志 ***


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